サラの弔いに暗い影を落とすカーディフとナントによる「カネの対立」。FIFAを巻き込む事態に発展か

2019年02月18日 結城麻里

「移籍金」の支払いはいまだ決着がつかず

現地2月15日、ナントと対戦したモナコの選手たちは、ウォーミングアップ時にサラへの弔意を込めたシャツを着用。サラの葬儀は故郷アルゼンチンで同日しめやかに行なわれた。 (C)Getty Images

 将来を嘱望されたアルゼンチン人ストライカー、エミリアーノ・サラの弔いに、"カネの対立"が暗い影を落としている。

 サラは痛ましい飛行機事故で亡くなる直前、リーグ・アンのナントからプレミアリーグのカーディフへの移籍が成立。カーディフにとっては酷な話とはいえ、契約はサラがドーバー海峡で消息を絶った当日の1月21日、法的に発効されているのだ。

 移籍金の総額は1700万ユーロ(約22億1000万円)+ボーナス200万ユーロ(約2億6000万円)。ところがカーディフが支払いを執行しなかったため、ナントが異議を申し立て、サラの弔いがまだ終わらぬうちから、2クラブ間で薄暗い対立が引き起こされた。

 この移籍金支払いにかかわる詳細は、ナント関係者の証言で段々と明らかになってきている。

 移籍金1700万ユーロは、3回に分けて支払われることになっていたという。1回目は600万ユーロで、サラが契約書にサインした直後。2回目も600万ユーロで、これは翌シーズン。3回目は残金500万ユーロで、翌々シーズンの支払い予定だった。

 カーディフがプレミアリーグに残留できた場合などを条件にしたボーナス200万ユーロも同様で、1回目は今シーズンに100万ユーロ、2回目は翌シーズンに50万ユーロ、3回目は翌々シーズンに50万ユーロとなっていた。

 まず問題として浮上したのが、最初の支払いとなる600万ユーロだ。

 フランスの全国紙『L’Equipe』が入手した情報によると、この最初の支払いは契約成立から「5日以内」と定められていたらしい。したがってナントは遅くとも1月26日には、600万ユーロを受け取るはずだった。ところがその前夜に英紙『Daily Telegraph』が、「カーディフはこの支払いを凍結した」と報道。これに衝撃を受けたナント側がカーディフに書簡を送った。

 次いでナントの働きかけで、2月1日に両クラブの意見交換が行なわれることになった。だがここでもカーディフのフロントは姿を見せず、弁護士事務所に振っただけだったという。

 このためナント関係者は、「最初からカーディフはナントとの対話を避けたのだ。事前に示談に向けた接触をしてくることもなかった。これほど特殊な状況で起きた案件なら、(示談の話し合いをするのが)理にかなっていた気もするのに……」と、気分を害してしまったのである。

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