「自分たちが諦めたら…」0-5でも瀬戸内の主将が最後まで“全力”を通せた理由は?【選手権】

2019年01月13日 羽澄凜太郎(サッカーダイジェストWeb)

「全国レベルってこれなんだな」。痛感させられた流経大柏との差

タレント揃いの流経大柏との差を感じながらも、佐々木(写真)を始めとする瀬戸内の面々は最後まで走ることをやめなかった。 写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

[高校選手権・準決勝]瀬戸内0-5流経大柏/1月12日/埼玉スタジアム

「最後まで全力で戦うこと。これが私たちにいま出来ることです」

 強豪校に大差をつけられながらも、試合終了のホイッスルが吹かれる瞬間まで、ひたむきにプレーを続けた瀬戸内イレブンを見ていて、筆者は今大会の選手宣誓で主将の佐々木達也が口にしたワンフレーズを思い出していた。

 試合は大差がついた。0-5というスコアが物語る通り、経験豊富な流経大柏と大会初出場の瀬戸内の力量に差があったのは紛れもなかった。それは後者の安藤正晴監督が、「現実に戻されたという感じですね」と漏らしていたほど明確なものがあった。

 そして、何よりそれをピッチ上で実際に対戦していた選手たちは実感していた。4-3-3の左インサイドハーフに入っていた佐々木は、「想像以上にプレスがきつくて、自分たちのサッカーはさせてもらえなかった」と回想する。

 普段はリズミカルなプレーとパスで攻撃に幅を生み出す背番号10だが、この日はタイトに寄せにきた相手の10番(熊澤和希)に動きを終始、牽制されて抑え込まれ、「全国レベルってこれなんだなと感じた」と素直に告白した。
 満足のいくプレーもさせてもらえず、点差が一方的に開いていく。それでも瀬戸内は、守備では球際で怯むことなくバトルを挑んだ。攻撃でも自分たちが貫いてきた"繋ぐサッカー"を捨てずに、相手ゴールを脅かすチャンスも作った。

 彼らの折れそうな心を繋ぎ留め、足を動かせていたものは一体何だったのか? それは昨年7月に発生した西日本豪雨の影響を受けた被災地で感じた想いからだったという。

 前述で触れた選手宣誓において、「答えの出ないなかで生きていくことは苦しくて、辛い、何をどうしていいのかっていうなかで、改めて考えるきっかけになりました」と話していた佐々木は、トップも含めてチーム全員で災害後に被災地でボランティアに参加したことが、団結が深めることに繋がったと明かした。

「ボランティア活動をしてみて、広島の方々が被災されたなかで、自分たちも何か恩返しがしたいという思いがありました。勝つことによって勇気づけられると思っていました。だからこそ選手権に対する思いはチーム全体にとって大きかったです」

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