【選手権】安部裕葵のような逸材を擁さずとも――。弱者から生まれ変わった瀬戸内が難敵・流経大柏に挑む!!

2019年01月11日 森田将義

走るチームカラーに拘っていたチームはいかにして変貌を遂げたのか

準々決勝では日本航空に1-0で勝利。瀬戸内は初出場初優勝を成し遂げるべく、流経大柏に挑む!! 写真:徳原隆元

 初出場でベスト4進出。瀬戸内が今大会で達成した偉業を聞く人が聞けば、ダークホースと思われるかもしれない。ただ、1月12日に行なわれる準決勝までの組み分けを見ると本命不在の山を引き当てたため、思い出作りの大会にするつもりはなかった。開幕前に、安藤正晴監督が「このブロックは全チームが、(上位進出の)可能性があると思っているはず」と語っていたのは、自身もチャンスだと捉えていたからだろう。
 
 上位進出への欲を覗かせてはいたが、シーズン当初の評価は決して高いとは言えなかった。一昨年のMF安部裕葵(鹿島)のようにひとりで試合を決められるようなエースがいなければ、身体に恵まれた選手もいない。今大会のスタメンを見てもそれは一目瞭然で、180センチを超えるプレーヤーは185センチのDF児玉絢(3年)だけ。「この10年で一番厳しい」とした指揮官の評価もあながち嘘ではないだろう。
 
 戦い方を見ても、新チーム結成当初は選手に合わないサッカーを志していた。チームカラーである走力と前への推進力を前面に押し出した戦いを嗜好し、安藤監督も「ガンガン行くのがうちの伝統になっていたので、それをしなければいけないと思っていた」。しかし、いつものスタイルで挑むには、かつての安部のように個の力が欠かせない。そのミスマッチは結果に反映され、プリンスリーグ中国の前半戦は勝点が伸び悩んで一時は最下位も経験した。
 
 それでも、インターハイ予選は結果に拘り、6度目となる全国大会出場の権利を手に入れた。

 これまでなら夏に全国大会に出られただけで満足していたが、今年度は「プリンスリーグもダメで、力もないのでなんとか結果が欲しかった」(安藤監督)。
 
 選んだ手段は瀬戸内らしさを捨て、今年に合ったスタイルの追求だった。理由を指揮官はこう話す。
 
「身長は高くないし、体力的にもそんなにあるチームではない。テクニカルな子が多いので、ポジショニングに全力を尽くして、ボールを動かそうと意識した」

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