【札幌】大躍進への評価は揺るがない。いつの日か広島戦の苦い教訓を生かす時が来るはず

2018年12月04日 斉藤宏則

指揮官、選手たちが口を揃え「守りに入ってしまった」

ホーム最終戦でファン・サポーターに挨拶をするペトロヴィッチ監督。チームを4位に躍進させた手腕は讃えられるべきだ。写真:徳原隆元

 タイムアップの笛が鳴った瞬間、札幌の選手たちは一斉にその場に倒れ込んだ。スコアボードに表示された最終スコアは2-2。4位の札幌はこの最終節で勝利すれば3位以上が確定し、初のACL出場を自力で決めることができた。ただし、引き分け以下ならば4位のまま。3位でシーズンを終えた鹿島が天皇杯で優勝すれば繰り上がりでACL出場権を手にすることができるが、自力でアジアへの切符を掴むべく力を振り絞った選手たちの奮闘は結実せず。2点のリードを追いつかれてのドローに、「とにかく、ただ悔しい」とキャプテンの宮澤裕樹は口にした。
 
 今季の札幌に対しては称賛しかない。ミシャことミハイロ・ペトロヴィッチ監督が就任し、昨季までの堅守速攻から攻撃的なスタイルへとドラスティックな変貌を目指したシーズンで大躍進。川崎に0-7で大敗した試合もあったが、それはハイレベルな相手に対しても勇敢に殴り合いを挑んだからこそ。それ以外はどんな相手にも互角以上に渡り合い、新たにチーム作りを開始したばかりとは思えないほどの力強さを披露し続けた。
 
 成績面でも昨季の11位から4位へとジャンプアップも果たしており、基本的にはあらゆることがうまく進んだシーズンだと言うべきだろう。今回は、そうした前提を踏まえたうえで、自力でのACL出場へあと一歩ないし半歩足りないものとはなんだったのか、最終節の広島戦から考えてみたい。
 
「どの試合も価値は同じ」「34分の1にすぎない」という考え方もあるが、実際には最終節はそうではなく、特別な意味を持つ。他会場の情報を入れながら試合を進めるべきケースも多々あるし、目標を達成するにあたって勝利が必要ない場合もある。この試合での広島はドローに持ち込んで2位の座を守り切っている。
 
 その試合後の会見でミシャが「我々は守りに入ってしまった」と言えば、選手たちも口々に同じ言葉を発していた。ここがひとつのポイントだったことは間違いないだろう。前半の21分までに2点を先制した札幌はミシャの指摘を借りれば「3点目を取りにいく姿勢が必要だった」のだが、そのまま試合を終えたい気持ちが過剰になってしまったのだろう。なにしろACLへの切符がもう目の前にあったのだから、分からなくもない。
 
 2点を先制した後、前半途中に1トップのジェイが自陣で相手選手にタックルを仕掛ける場面があった。もちろんそのプレーだけを切り取れば好プレーだと評価すべきだろう。しかし、2-0でリードした状況で、前半のうちから最前線の選手が自陣で守備をしていたのだから、やはり札幌は守りに入っていたということだ。

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