父親は偉大な点取り屋! セリエAで売り出し中の“二世FW”は「真の大器」か!? それとも…

2018年11月03日 片野道郎

父親と瓜二つのプレースタイル。

イタリア代表として17試合・7得点の実績を誇る偉大な父・エンリコ(右)を超えようとしている息子のフェデリコ・キエーザ(左)(C) Getty Images

 ここ最近サッカー界で、よく目にするのが、いわゆる「2世タレント」だ。偉大な父の血を継ぐスター候補たちは、単なる親の七光りなのか、それとも真の大器なのか。

『ワールドサッカーダイジェスト』誌で好評連載中の「2世タレント診断書』の第1回は、イタリア代表にも定着したフェデリコ・キエーザだ。

 パウロ・ソウザ監督(当時)に抜擢され、18歳でセリエAデビューを飾ってから約2年。フェデリコ・キエーザは、すでにフィオレンティーナはもちろん、イタリア代表でも不可欠な存在になりつつある。

 175cm・70kgという小柄な身体に備えた爆発的なスピードと、右足を鋭く振り抜くシュートのフォームは父エンリコ・キエーザと瓜二つ。違いがあるとすれば、エレガントで切れ味鋭い突破が持ち味だった父と比べ、プレーが強引かつ直線的なところか。狭いスペースでのボールテクニックでは劣るものの、パワーやスピード、持久力といったフィジカル能力は上回っている。

 ペナルティエリアの幅を主戦場とする純粋なFW(セカンドトップ)だった父と比べると、ピッチの横幅をカバーし、自陣に戻るのも厭わない献身的なスタイルは中盤の選手に近い。

 最も持ち味を発揮できるのは右ウイングだ。ボールを持つと、まずはドリブルを選択し、突破が無理なら近くの味方に預けて、パス&ランというシンプルなプレースタイル。ゴールに近づいたらシュート、タッチライン際をえぐったらクロスという自己完結性の高いプレーヤーだ。

 プレーのレパートリーが少ないにもかかわらず決定的な違いを作り出せるのは、そこにクオリティーが伴っているから。ドリブルひとつをとっても、爆発的な初速でマーカーをぶっちぎるだけでなく、DFに対面した時の急制動、そこからの方向転換と、急加速とチェンジ・オブ・ペースをきわめて効果的に活用する。

 サンプドリアの育成部門で育ち、パルマ、フィオレンティーナなどで活躍した父は、37歳までセリエAでプレーした。セリエA通算139得点は歴代32位の立派な数字。同世代のクリスティアン・ヴィエリ、ヴィンチェンツォ・モンテッラ、フィリッポ・インザーギ、アレッサンドロ・デル・ピエロといったワールドクラスに阻まれ、A代表では17試合・7得点に留まるも、1990年代後半から2000年代前半を代表するFWのひとりだ。

次ページ全盛期の父親を超える可能性は十分だ。

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