「冨安の才能は間違いない」「遠藤はとても賢い」シント=トロイデンの指揮官が明かす日本人の長所と短所【STVV現地レポート③】

2018年10月22日 中田徹

「STVVはマルチカルチャーなチーム。率いることは指導者冥利に尽きる」

出場機会が安定してきた3人をはじめ、「彼らの実力は疑うべくもない」とブライス監督も信頼を寄せている。 (C) STVV

 シント=トロイデン現地レポートの最終回は、チームを率いるマルク・ブライス監督へのインタビュー。日本人選手5人の実力、そしてオーナーが変わったクラブの状態を、どう考えているのか聞いた。

   ◆   ◆   ◆

 中欧の秋は肌寒いものだが、今年の10月のベルギーはとても暖かい。二部練習の合間に、暑い日差しを浴びながら私はマルク・ブライス監督の話を聞いた。

 まるで音楽のような、柔らかなトーンでオランダ語を喋る人だった。そして選手への慈愛に満ちたトークをする人だった。戦術的な質問にも、かなりオープンに喋ってくれた。

 私は夢中になってブライス監督の話に耳を傾けていた。すると、コーチ陣が午後の練習に使う用具を持って、私たちの横を通り過ぎていった。しまった! 監督にも午後の練習の準備があったはずなのだ。気付いたらインタビューは50分を超えてしまっていた。

 ブライス監督はアントワープで警官を勤めながら指導者の世界に入り、ベルギーのトップトレーナーになった人だ。サッカーの魔力に取り憑かれた男の話は、インタビューというよりカフェのサッカー談義のような本音に溢れていた。
 

――ここに来る前にシント=トロイデンの町に行ってきました。STVVの旗がたくさん出ていました。

「素晴らしいことですね。やっと……という思いです。批判もありましたからね。ちょっとずつホームゲームの観客数も増えているんですよ。前節のムスクロン戦は6000人でした。何より、町の人たちのSTVVに対する熱狂が戻ってきました」

――「批判があった」とは、具体的には?

「前体制への批判です。チームの良い選手をすぐに売ってしまうということが続きました。選手だけでなく、監督も安易に放出してしまったこともありました。その結果、STVVの戦力が下がってしまい、シント=トロイデンの人たちは辛い思いをしたんです。

 だから、私たちは先ず、市民からの信頼を取り戻す必要がありました。(DMMが運営するようになり)クラブマネージメントがよくなったこと、フットボールそのものが向上していること、そして、試合に結果を出すことが重要でした。

 私が思うに、STVVとシント=トロイデンの間に生まれた最も大きなビクトリーは、0-0の引き分けに終わったアンデルレヒト戦(第9節)でした。22分に退場者が出てしまい、STVVは70分間も10人で戦う苦境に陥りましたが、選手たちが本当によく闘いました。

 試合後、アウェー応援席にいたサポーターたちは、まるでチームが勝ったかのように喜び、選手たちをねぎらいました。サポーターからのクラブに対するポジティブな思いが伝わってきましたね。なかでも、日本の国旗が振られていたことが、サポーターのクラブに対するシグナルのような気がしました」

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