【インタビュー】手倉森誠U-21日本代表監督「五輪世代に求めるのは柔軟性と割り切り」

2014年07月30日 広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)

これからの世代はもっと「全員守備・全員攻撃」を身につけるべき。

手倉森誠(てぐらもり・まこと)
1967年11月14日生まれ、青森県出身。現役時代は住友金属/鹿島、NEC山形に所属。引退後、山形、大分、仙台でコーチを務め、08年に仙台の監督に。14年にリオ五輪を目指すU-21代表の監督に就任。(C) SOCCER DIGEST

――ブラジル・ワールドカップを現地視察されたなかで、どのような印象を受けましたか?
「まず、世界は進んでいるな、歩みを止めていないなと強く感じました。前回の南アフリカ大会で示されたスタンダードに対して、どんな事象が起こっているのか。そうした視点で見ると、4年前のスタンダードは継続されつつも、それ以上のものを打ち出してくる国がありました。前回、優勝したスペインのポゼッションサッカーに対抗しようと、ライバルたちは自分たちのポゼッション力を成長させつつ、スペインのそれを打破するための戦略も進化させてきた。そしてそういう国が勝ち上がる傾向にありました」
 
――スペインを打破するための具体的な戦略とは?
「ポゼッションサッカーに負けないためにどの国もやっていたのが、全員守備。全員守備とまではいかなくても、守備力をしっかり高めてきていました。ボールを握る(=保持する)のは当たり前で、それを打ち負かすための守備力を、全員守備という形で準備してきている国がほとんど。そして攻撃は全員攻撃でした」
 
――「全員守備・全員攻撃」は、監督がU-21代表チームでも掲げているコンセプトです。
「大会を観ながらU-21の選手たちも『こういうことだったんだな』と感じながら観てくれているんだろうなと、そんな風に思いながらブラジルで観ていましたけどね(笑)。個人的にも、ここまで多くの国が守備力をパワーアップさせているとは予想外でした。ただ、自分としては、このU-21代表チームを率いるにあたって、これからの世代はもっともっと『全員守備・全員攻撃』を身につけなければ、世界で戦えないと考えていました。特に若い世代にはしっかりと守備能力を磨いてほしいですが、当然ながら、ただ守るだけでなく、攻撃的な姿勢や堅実さ、強さ、厳しさも備わってないといけない。私が打ち出すサッカーは堅守速攻だけど、堅守『遅攻』もできるんだぞ、と。そのためには結局、戦い方にバリエーションを持つ必要があります。守備に関しても、いつもブロックを組んで守るのではなく、前からプレスをかけることもある。『これがダメなら、プランBがある』といった柔軟性こそが、今後の若い世代にとって最大のテーマとなるはずです」
 
――状況に応じて、臨機応変に対応する力が求められる、と?
「柔軟性、そして割り切りが大事だということは、これまでにも選手たちに話してきました。今回のワールドカップでは、高い守備力のほか、柔軟性と割り切りのある国が好成績を収めていました。自分たちと相手のストロングポイントを見比べた時、どんな展開に持ちこんでいくのか。攻勢の時間帯、劣勢の時間帯、今はやりたいことを我慢するのか、いつそれを発揮するのか。それらを正確に見極めながら、用意周到な準備の下で戦っていた」

次ページ他の強豪国の若手は、W杯の舞台で柔軟性や割り切りといった部分を経験している。

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事