いざ、38回目の選手権へ…名伯楽、小嶺忠敏のイズムと真髄(後編)

2017年12月25日 川原崇(サッカーダイジェストWeb編集部)

やはり学ぶだけ学んでからプロになってほしい

2004年正月の小嶺監督。当時は国見で校長を務めながら、総監督としてチームを率いていた。(C)SOCCER DIGEST

 国見時代、小嶺忠敏監督は数多の名ストライカーを世に輩出した。
 
 高木琢也、船越優蔵、大久保嘉人、平山相太、さらには渡邉千真。いわゆる超高校級の怪物FWを根気強く育て上げ、彼らはJリーグや日本代表の舞台でも活躍した。そんな目利きの名伯楽の薫陶を受け、来春にプロの門を叩こうとしているのが長崎総科大附の3年生エース、安藤瑞季だ。2017年度のユース年代最強ストライカーで、U-18、U-19、U-20と三世代の日本代表に選出されている注目株だ。
 
 一方で先生は、高校からいきなりプロになる流れについては、以前と変わらず懐疑的だ。およそ半世紀に及ぶ指導キャリアの中でストレートインを許した教え子は、決して多くない。安藤に対しても大学進学のほうがいいと、ずっと説得を続けていた。
 
 契約クラブはまだ発表されていないが、プロ行きが濃厚のようである。小嶺監督の本音を訊いてみた。
 
「超一流は別だけど、そうでないなら、やはり学ぶだけ学んでからプロになってほしい。その考えは昔から基本的に変わってないし、安藤にもそうしてほしかった。筋力やパワーだけでは厳しいんじゃないかと思う部分があるからね。いまの大学サッカーは設備も指導方法も充実してるし、なにより試合に出て能力をまだまだ伸ばせますよ。でもやはり、Jリーグのほうがよく見えるんでしょう。最終的には本人が決めることですからね」
 
 以前、Jリーグの新人講習会で講話を依頼されたことがある。小嶺さんはこんな投げかけをしたという。
 
「135人の新人がいた。そこで僕は、こう言ったんだ。『Jリーガーになる夢を達成して素晴らしいと思う。ただ君たち135人が新しく入ったことで、135人が出て行った、クビになったという事実を頭に入れておきなさい』と。現在Jリーガーが引退する平均年齢は26歳ですよ。入団当初はうきうきしてるから、なかなかこうした言葉は耳に入ってこないのかもしれないけど、後悔だけはしてほしくないからね。日本は教養の高い国。大学に行けるなら行ってほしい。そうすれば、Jリーグのスカウトさんたちに、『大学を卒業するまで見てやってください』とも言ってやれる」

※編集部・注/12月27日、セレッソ大阪が安藤の来季入団内定を発表した。

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