風間グランパスがプレーオフで見せた成長と課題。来季のJ1でもパスサッカーを貫けるのか?

2017年12月04日 今井雄一朗

割り切った戦い方が決勝の"勝因"に。

キャプテンの佐藤は「J1での優勝はもっと笑顔になれる」と来季の戦いに目を向けている。写真●山崎賢人(サッカーダイジェスト写真部)

 [J1昇格プレーオフ決勝]名古屋0-0福岡/12月3日/豊田スタジアム

 スコアレスドローという実にらしからぬスコアで、名古屋が1年でのJ1復帰を果たした。シーズンを通して貫き、時にその弊害として勝点を落とすことにもつながったボール保持を基調としたスタイルを一部諦めた結果とも言える。ただ、それでチームの軸がブレたかと言えばそうではない。
 
 むしろ、これは名古屋がJ1仕様のチームになっていくための、大きな転換点でもあったように思える。降格組で、しかもJリーグのオリジナル10であるクラブにとって、J1昇格は再出発の起点に過ぎない。試合後の選手たちは喜びよりも安堵感のほうが勝り、キャプテンの佐藤寿人は「J1での優勝はもっと笑顔になれる」と早くもJ1タイトルへの意欲を見せている。理想追求型のチームだった彼らが見せた勝負へのこだわりは、その点においても好意的に受け取れるものだった。
 
 レギュラーシーズン+プレーオフ準決勝・千葉戦のハイブリッドな戦い方が、福岡戦の"勝因"だった。準決勝では千葉のハイプレスに対し、後方からつないで押し上げていく本来のスタイルを一部封印し、ロングフィードを使って相手の狙いを空転させたことが勝利の一因となっていたが、福岡に対しては運用法をよりブラッシュアップして臨んでいた。「無理せずロビン(・シモビッチ)の高さを生かしつつ、相手陣でつないでいこうという理解でやっていた」と話すのは、その判断を最初に求められるGKの武田洋平だ。
 
 キックオフからウェリントンと松田力、仲川輝人らの3トップが激しくプレッシャーをかけ、ビルドアップの阻害と奪ってのショートカウンターを狙ってきた福岡はこれで出鼻をくじかれ、おそらくは想定よりも効果を発揮できなかった。19分の山瀬功治と仲川の決定機が決まっていれば、というところもあるが、これは武田が気迫のセービングで先制点を渡さなかった。

 その後はウェリントンがワシントンとの駆け引きでイライラを募らせ、パフォーマンスが一時低下。だが主導権を握り返した名古屋も前半5度あった決定機を仕留められなかったことで、試合はさらに膠着していく。

次ページJ1では自分たちのスタイルを貫くことが難しい試合も増える。

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