【現地発】イタリアが認めた長友佑都の「名脇役ぶり」は日本代表にもポジティブな風を

2017年11月09日 片野道郎

「長友はインテルには相応しくない」との声を払拭。

今シーズンのインテルでは開幕から左SBのレギュラーを張る長友。ライバル加入もどこ吹く風だ。写真:Alberto LINGRIA

 11月10日のブラジル戦(国際親善試合)で、日本代表通算100試合出場に到達する長友佑都。今シーズンは所属するインテルでのパフォーマンスも近年になく好調だ。
 
 開幕から左SBとしてレギュラーの座を掴み取り、ターンオーバーで外れたスパル戦(3節)とジェノア戦(6節)を除く10試合に出場し、左ウイングのイバン・ペリシッチと絶妙な連携を保ちながら、攻守両局面でコンスタントな貢献を果たしている。
 
 2010年の南アフリカ・ワールドカップ直後にチェゼーナに移籍してからこれがイタリアの8シーズン目。当時は無尽蔵の運動量と左右両足を使いこなす安定したテクニックが売り物の、「質より量」で勝負するタイプのSBだった。
 
 しかし、この戦術大国において多くの監督の下でプレーする経験を積み重ねた今の長友は、フィジカル能力以上に読みや状況判断といった戦術的な能力を活かしてチームのメカニズムの中で機能できるプレーヤーへと成熟を果たしている。今シーズンからチームを率いるルチアーノ・スパレッティ監督の信頼はきわめて厚く、大きな故障をすることなくこのパフォーマンスを持続できれば、キャリアの中で最も充実したシーズンとなりそうな予感すら漂っている。
 
 長友にとって、ここ3年間は困難な道程だった。悪い意味でその節目となったのが、ブラジル・ワールドカップ直後の14-15シーズン。筋肉系の故障による長期離脱を二度繰り返し、その間にはアジアカップによる欠場期間もあって、出場はわずか14試合(通算出場時間891分)にとどまった。
 
 それを境に、足かけ4シーズン守り続けたレギュラーの座を失い、左右のSBはインテルにとって最優先の補強ポイントだと言われ始めた。「マスコミ辞令」で必ずと言っていいほど放出リストに名前が挙がるようになったのもこの頃からだ。
 
 チームへの要求水準が過剰なほどに高いことで知られるインテリスタたちの間でも、「長友はもはやインテルには相応しくない」という声も出始め、サン・シーロではミスをするとため息やブーイングが聞こえるようにもなっていた。
 
 実際クラブは、移籍マーケットのたびにこのポジションに新戦力を獲得し続けてきた。14-15はドドとダビデ・サントン、15-16はマルティン・モントーヤとアレックス・テレス、昨シーズンはクリスティアン・アンサルディ、今シーズンはダウベルトとジョアン・カンセロという具合である。
 
 イタリアの選手たちは、自分のポジションに新戦力が補強されると「クラブが俺に新しい選手を買ってくれた」という皮肉交じりの言い方をよくする。それで言えば、長友ほどたくさんの選手を「買ってもらった」プレーヤーはそう多くない。
 

次ページウイングのペリシッチをフォローする形が定着。

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