シメオネ・アトレティコの「独自トレーニング」を考察。異彩を放つハイインテンシティーの源とは?

2017年03月17日 カルレス・クアドラット

万事でチームの勝利のためにすべての情熱を傾ける。

2011年12月に監督就任以降、アトレティコを欧州屈指の強豪に育て上げたシメオネ。その独自トレーニングとは? (C)Getty Images

 ディエゴ・シメオネが指導するトレーニングを見学するのは、とても刺激に満ちている。現代のサッカーシーンにおいて、名将と呼ばれる監督は何人かいる。しかし、シメオネほど情熱的かつエネルギッシュで、なおかつそれを選手に注入する能力に長けた指揮官は他にいないだろう。
 
 私が彼の練習を初めて見学したのはアトレティコ・マドリーの監督に就任したばかりの頃で、今から5年ほど前のことだ。大抵はこれだけの歳月が経過すれば、多少は丸くなるものだ。しかし、少し前に練習場を訪れた時も、シメオネの強烈なリーダーシップは全く陰りが見られなかった。
 
 つい先日も、シメオネらしさを垣間見たシーンがあった。2月7日のバルセロナとのコパ・デル・レイ準決勝ファーストレグ。カウンターから絶好のチャンスを迎えようかというその時、主審はアトレティコ側にファウルの判定を下した。その瞬間、シメオネはスーツを着ているのを忘れたかのように跪いて、オーバーリアクションで悔しさを露に。試合においても、練習においても、万事でチームの勝利のためにすべての情熱を傾ける――。それがシメオネのスタイルなのだ。
 
 もちろん、他にも情熱的な指導者はいる。ジョゼップ・グアルディオラやジョゼ・モウリーニョもそうだ。ただ、2人とも監督経験を重ねるうちに、試合で見せるジェスチャーや表情が大人しくなってきた。決してそれを批判したいわけではないが、シメオネが持つ人一倍強い勝利への情熱が近年のアトレティコ快進撃の原動力となっているのは、誰もが認めるところだろう。
 
 日々のトレーニングでも、そうしたシメオネの流儀は随所に見える。例えば、試合翌日の練習。私がまず驚くのは、シメオネ自身が陣頭指揮を執っていることだ。
 
 前日に試合を戦ったレギュラー組はクールダウンが主目的であり、選手と談笑しながらアシスタントコーチと戦術の確認をするというのが、通常の監督の姿だ。試合に出なかった選手たちが脇で練習を行なっていても、他のコーチに指導を任せるのが現代では一般的になっている。
 
 しかしシメオネは、自ら選手の指導を買って出るだけでなく、通常通りの厳しい練習を課していたのだ。その時に私は悟った。シメオネのチーム内における求心力は、日々繰り返されるトレーニングの取り組みによって培われているのだと。

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