その熱気はHONDAの生産レーンもストップさせるほど!? タイでプロになった日本人・樋口大輝が6年間で見たものとは?

2016年11月26日 佐々木裕介

3部リーグだったチームが3年で1部リーグへ。

タイ・ホンダFCをキャプテンとして牽引する樋口。加入時はタイ3部だったチームを来季1部昇格へと引き上げた。

 プロサッカープレーヤー「樋口大輝」を知る日本のサッカーファンはそう多くないだろう。それもそのはず、彼はJリーグでのプレー経験を持たずして海外へ飛び出したからだ。
 
 今でこそ50名強の日本人選手がプレーし、日本でも一目置かれるようになったタイサッカーリーグであるが、樋口が来泰した当時はいまのソレと大きく異なる環境であった。苦節6シーズン、タイサッカーが大きく変貌を遂げている時代に選手として身を投じ感じた実経験は計り知れないものがある。
 
 気が付けば2時間近くにも及んだ歴史の生き証人への取材、書けるものから書けないものまで、非常に興味深いインタビューとなった。少し堅苦しいものになってしまったが、是非読んでいただきたい、そしてタイサッカーを感じてほしいと思うのである。
 
 取材・文・写真:佐々木裕介(フリーライター)
 
――◆――◆――
 
――まずは所属するタイ・ホンダ・ラックラバーンFC(以下、タイ・ホンダFC)のYAMAHAリーグ・ディヴィジョン1(タイ2部リーグ/以下、ディヴィジョン1)優勝、また来季のTOYOTAタイリーグ(タイ1部リーグ/以下、PLT)昇格、おめでとうございます。
 
 ありがとうございます。3年で3部から1部へ昇格、掲げた大きな目標を達成できて嬉しいです。
 
――今シーズンを振り返っての感想を聞かせてください。
 
 正直、上手くいき過ぎだなあというのが本音です。こんなにトントン拍子に行くシーズンも選手人生で初めてでしたし、前半戦は守備が良かったけれど点が取れない試合が多く、勝ちきれず苦労しましたが、夏の移籍マーケットで前線に外国人を補強したのが当たった感じです。監督はシーズン前のチーム始動時から何か特別なことを施してきた訳ではなく、普段から選手で考えてやりなさいというスタンスの方なので、逆にそれが良かったのかもしれないです。
 
 今シーズンの10月にプミポン国王が崩御された影響でシーズンが打ち切りで終了になりました。まぁ長く居ればいろんなことがあるものです。
 
――タイ・ホンダFCで3シーズンを過ごし、チームキャプテンを任される存在です。チームの空気感が肌にあったのでしょう?
 
 チームの雰囲気は好きですよ。当初からPLT昇格という確固たる目標を持って進められたことが、すべてかと思っています。移籍してきた時にタイ・ホンダFCは3部リーグ所属、私は1部からの移籍でしたから、傍からみれば『都落ち』な訳ですよ。もうトップレベルでプレーするのが厳しいんだろうな的な。実は、当初は移籍前提でなく、コンディション調整目的でチームの練習に参加させてもらっていたのですが、すごく雰囲気が良いチームだなと。私にとってプレーヤーの質やディヴィジョンはそれ程関係がなく、みんなが一丸となって同じベクトルを持ってできるかどうかが重要だったんです。ご縁をいただき、タイ・ホンダFCでプレーできて本当に幸せです。
 
――俺がPLTへ上げたんだ的な自負はお持ちですよね?
 
 そうです~(恥笑)。いやいや、冗談ですよ。でもチームのことを一番に考えているのは俺だという自負はありますよ。チーム内でトラブルが起きれば、自ら解決したいと常々思っていましたし。毎年新しい選手が入って来ると起きることなんですが、練習前のボール回しでも古株組と新加入組でグループができてしまうんです。でもそういうのを見ていて、上手くミックスしたりとか。やっぱり、チームへの思い入れは強くありますよ。
 

次ページ『サッカー選手として飯が食える』ことがとにかく嬉しかった。

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