抑えきれなかったパッション――。国王崩御に沈むタイが豪州から勝点1ゲット、その裏にあったエピソード

2016年11月17日 佐々木裕介

タイ国内に衝撃が走った国王陛下崩御のニュース。

タイのサッカーの聖地「ラジャマンガラスタジアム」。喪に服しているため応援や応援道具の持ち込みは禁止された。

 2016年10月13日、現地時間の午後7時、タイ国内に衝撃が走った。プミポン・アドゥンヤデート国王陛下(ラーマ9世)崩御のニュースが公式に伝えられたのだ。18歳の若さで即位されてから70年、国の秩序を守り、国民の心の拠り所であり続けた偉大な「タイ王国の父」であった。
 
 それから1か月が過ぎた11月15日、ワールドカップ・アジア最終予選を戦うタイ王国代表チームは、オーストラリア代表をホームに迎え、無事"予定通り"に試合が行なわれた。
 
 というのも、当初タイサッカー協会(以下、FAT)は、国全体が喪に服していることを考慮して、来年9月に予定されているオーストラリアのホームゲームとの入れ替えや中立国での開催を国際サッカー連盟(FIFA)とアジアサッカー連盟(AFC)に要請していたのだが、オーストラリアサッカー連盟(以下、FFA)がこれを強く拒否。一時無観客試合で行なうことも考慮されたものの、亡き国王陛下へ弔意を表わす形を取り、派手な服装や応援道具持ち込みを禁止、またスタジアム内外での応援行為自粛という条件付きで開催を決定し、国内で予定通りに行なうことで落ち着いたのだった。これが試合開催に至るまでの大まかな経緯である。
 
 そして私は、この「前例なき歴史的一戦」をどうしても現場で体感したく、タイサッカーの聖地「ラジャマンガラ」へと足を運んだ。
 

次ページオーストラリア代表も弔意を示す喪章をつける。

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