【湘南敗因検証】J1はロマンだけでは生き残れない。降格を“予兆”した指揮官の言葉

2016年10月28日 塚越 始(サッカーダイジェスト)

開幕から間もなく、「私たちの乗る車自体に、なにかが足りないと…」。

前節の大宮戦、2-3で敗れてJ2降格が決定。湘南の選手たちがピッチに倒れ込む。写真:佐藤明(サッカーダイジェスト写真部)

 開幕からまだ間もない頃だった。
 
 湘南が痛恨のキックミスから失点を喫して敗れたあとの記者会見で、曺貴裁監督は言葉を選びながら、次のように敗因を語った。
 
「たとえば車に乗って高速道路を快適に走っていた時、飛び出してきた獣と当たって車がスピンしてしまったとしましょう。ドライバーは、なぜ事故が起きてしまったのか、どうすれば防げたのかを考えるわけです。減速すべきだったのか? もう少し周りを見ていれば良かったのか?」
 
 そしてピッチに話を展開した。
 
「要するに、あのプレーで急ブレーキがかかってしまったのは事実。しかし、ドライバーが決して周りを見ていなかったわけではありません。不注意というわけではない。つまり、私たちの乗る車自体に、チーム自体に、目に見えないものを含めて、なにかが足りないんだと言われている気がしました。そこには私のコーチングの質も含まれます」
 
 湘南というヴィークル(乗り物)が、力不足だった――。今振り返ってみると、湘南のその後を予期したようなコメントだった。

 さらに指揮官は、次のようにも言っていた。
 
「ひとつの出来事が契機となり、空気が変わってしまうことはよくある」
 
 一瞬のミスで、試合を台無しにしてしまう。実際、改めてJ1の厳しさを見せつけられるように、今季の湘南はそんな試合が目立った。

 ただし、指揮官の言うとおり、それがチームであり、クラブとしての「実力」だったのかもしれない。

次ページ「前傾」を取り戻そうとした第2ステージ、わずか1勝しか挙げられず。

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