大久保の偉業を阻むのは、この男しかいない!ピーター・ウタカが示す"途轍もない"可能性

2016年05月29日 中野和也

チームメイトが送る称賛の声。青山は「ウタは得点もできるし、そのひとつ前の仕事もできる」

10得点で得点ランクトップに立つP・ウタカ。周囲を活かす能力も非凡だ。写真:徳原隆元

 12試合で10得点、1年で28得点ペースという驚異的な得点力。だが、圧倒的に早いペースでのふた桁得点を記録した13節・G大阪戦を終えた後のピーター・ウタカに、笑顔はなかった。
 
「自分の得点について、話すことはない」と一蹴。「この結果に落胆している人も多いだろうが、フットボールにはこういうことは起きうるもの。しっかりと練習を積んで、切り替えるしかない」。完敗したチームを慮り、周囲を励ますかのように話したのだ。
 
 P・ウタカが周囲から尊敬を受けているのは、この人間性にある。セルフィッシュな要素は微塵もない。周囲に気を配り、コンビネーションを大切にする。
 
「北京国安の時とは、スタイルを敢えて変えている」と語るのは、足立修強化部長だ。当時は強烈な個の突破を見せつけていたが、今は周りを使う意志が目立つ。
 
「その気になれば、強烈なスピードも持っているが、今は周りを上手く使っている。チームにとってそれがベターだと思っているからでしょう」(足立部長)
 
 すべては、チームのため。そういう選手だからこそ、周りもウタカを頼りにする。
 
「ウタは得点もできるし、そのひとつ前の仕事もできる。相手にとっては最も危険な選手だし、チームを助けてくれる。彼をどう生かすかは、僕らの大切な仕事です」
 
 パサー=青山敏弘の言葉である。林卓人は「少ないチャンスをゴールに持っていく技術もあるし、ボールが自分から多少離れていてもコントロールできる巧さがある」と称賛する。
 
 さらに柏好文は「いったい、何点とるんでしょうね」と苦笑いしつつ、「僕らがもっと彼を生かせるプレーがしたい。ウタの良さをもっと引き出すことができれば、僕たちも得点ができるようになる」。
 
 ただ、P・ウタカへの警戒は当然、厳しさを増している。G大阪戦では岩下敬輔と丹羽大輝が徹底して彼に身体をぶつけ続けて自由を奪った。また、シャドー(柴崎晃誠・茶島雄介)との関係を寸断するために今野泰幸と倉田秋が労を惜しまない。P・ウタカは思うようなパスも出せず、苛立ちから彼らしくないミスも増えた。

次ページ2トップを操るトップ下での起用も「オプションとして十分に使える」(森保監督)

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