【FC東京】「入ればいいんです」。強気と計算が生んだ水沼宏太の2ゴール

2016年05月18日 白鳥和洋(サッカーダイジェスト)

「最初は『モリくん(森重)、蹴ってよ』と頼んだけど…」

2ゴールを決めて勝利の立役者となった水沼。ゴール後に前田と抱擁を交わした。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

 アジア・チャンピオンズリーグ(以下ACL)のラウンド16、上海上港をホームに迎えた第1戦でFC東京に先制のチャンスが訪れたのは43分だった。エリア手前、ゴールの正面に近い位置でFKを得ると、水沼は森重となにか相談しながら蹴る準備をしていた。

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「(ゴール前での距離が)ちょっと近すぎたので、最初は『モリくん(森重)、蹴ってよ』と頼んだら、『お前、蹴れよ』と言われて」
 
 こうしてFKを任された水沼は、気持ちを落ち着かせる。そして──。
 
「GKを(壁を作って)隠した時に自分のなかでコースが見えた。そこに思いっきり蹴ろうと思いましたね。(蹴ったボールが)どこかに当たったみたいですけど、入って良かったです。自分の感覚であそこに蹴ったのが良かった」
 
 "あそこ"とは、結果的に高橋の股を指す。

 スローVTRで確認すると、「よくそこを通した」というハイレベルなシュートである。コースは狙った水沼も、股までは狙っていなかったようで、「股を狙っていたのか」という質問に対しては「う~ん、まあ、入ればいいんです」と返していた。

 とはいえ、「あそこに蹴ろう」という強気な姿勢がゴールにつながったのは紛れもない事実である。
 
 見事な先制弾を叩き込んだ水沼は、後半にも大きな仕事をやってのける。1-1に追いつかれた後の65分、徳永のクロスを右足で丁寧に合わせて勝ち越しゴールを奪ったのだ。

 前半のゴールが"強気"なら、後半のこの得点は"計算し尽くされていた"。
 
 実を言えば、水沼は前半に、ある感覚を掴んでいた。
 
「前半、(東)慶悟に何度かクロスを上げていてファー側の相手がボールウォッチャーになるのは分かっていた」
 
 だから、65分の場面、水沼は「左サイドで(徳永)悠平さんが切り返した時点でファーに行こうと思った」
 
 その判断はずばり的中。フリーになった水沼は「思い切り振り抜くというより、当てた」シュートでゴールネットを揺さぶった。
 

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