【EURO2016開催地を巡る旅】第4回:トゥールーズと“スタディウム”「陽気で人懐っこい薔薇色の町」

2016年04月23日 結城麻里

ラグビーの街に建つ日本サッカーにとって思い出のスタジアム。

 前回紹介したボルドーから、ガロンヌ川を上流へ上流へと辿っていくと、そこには「ヴィル・ローズ(薔薇色の町)」の別称で親しまれるトゥールーズ市(人口約44万)があります。古来、ミディ地方と呼ばれてきた南国の、有名な古都です。
 
 以前、日本で、トゥールーズ出身のビジネスマンが同郷の有名歌手クロード・ヌガロのジャズ「オー・トゥールーズ」を聞いて涙ぐんでいた姿を思い出します。この街の人々の人懐っこさと美しい夜景を見れば、彼がホームシックになったのも納得できるでしょう。
 
――◇――◇――
 
 そんなトゥールーズ、実はラグビーの町として有名です。リーグ優勝19回を誇るスタッド・トゥールーザンが、人々のパッション(情熱)になっているからです。
 
 しかし、フットボールも頑張っています。
 
「TFC(テー・フェー・セー)」の略称で知られるトゥールーズ・フットボール・クラブは、中堅ながらトップリーグで踏ん張り続けており、有名選手も次々とこのクラブを通過していきました。
 
 有名どころでは、現在、メキシコで大活躍中のアンドレ=ピエール・ジニャクもそのひとりですが、やはり筆頭は1998年フランス・ワールドカップで世界王者の一員となったGKのファビアン・バルテズでしょう。
 
「ディヴァン・ショーヴ(禿げ頭の神様)」のニックネームでフランス中から愛された彼はこの地方出身で、今回のEURO2016ではアンバサダーを務めています。
 
 そんなTFCのホームグラウンド「スタディウム・ミュニシパル・ドゥ・トゥールーズ」、通称「スタディウム(スタジアムのフランス語読み)」は、今大会の全10会場のなかでは最小であり、収容人員は3万3千人です。
 
 とはいえ、前述の98年W杯で世界中の人々を迎えた経験を持ち、今回もここでスペイン対チェコ戦、イタリア対スウェーデン戦などが行なわれます。
 
 ここはまた、日本人にとっても思い出の場所ですね。W杯初出場を果たした日本代表の歴史的な初戦は、このスタジアムで行なわれたのですから。強豪アルゼンチン相手に堂々たる戦いを披露した日本のことを、トゥールーズの人々は、今でもよく覚えてくれています。
 
 スタディウムはガロンヌ川に浮かぶ島の上にあり、市中心部からもメトロで10分程度。試合前後には、郷土料理や観光もたっぷり楽しめることでしょう。

次ページ名物は日本人でも満足できること請け合いのカスレと鴨料理。

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