マドリーがCLで起こしたシティ撃破の“奇跡”。まるで死の淵から甦る準備が整っているかのように...【現地発コラム】

2024年04月30日 エル・パイス紙

マドリーのお気に入りの前提は決してあきらめないこと

CL準決勝でシティを破ったマドリー。(C)Getty Images

 ねじれたサッカーの世界には、不可能を可能にする道は無限にある。ミステリアスなレアル・マドリーが絡めば、なおさらだ。今回、クラブの長い歴史における最新章で、新たな矛盾を探した。

 蝶から幼虫へと成長に逆行しても勝ち続けることができるし 過去に見せたことのないようなサッカーができるし、劣勢を強いられる展開でも、小さなチームのような守備的な戦いで偉大さを発揮する。

 舞台はホームの第1レグを3-3のドローで終え、マンチェスター・シティの敵地エティハドに乗り込んだチャンピオンズリーグ(CL)準々決勝第2レグだった。マドリーは歴史的なプライドを捨てることなく、雄弁にそのすべてを語った。

 マドリーのお気に入りの前提は決してあきらめないことであり、最後に選んだ道は、まるで銃をずっと頭に突きつけられているかのような苦悩に満ちたものだった。その戦いぶりは犠牲的精神に溢れ、選手たちはまつげにまでも痙攣を起こして試合を終えた。

 そしてもちろん、気高さ、寛大さ、忍耐力、連帯感といったサバイバルに生き残るために必要な要素を最適な配分ですべてを含んだ一種の競争欲のような英雄的精神に溢れた。マドリーは再びサッカーを少し先に進めた。
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 歴史は感情、偉業、統計の上に築かれる。マドリーはCLにおいてそのすべてを十分に備えている。シティの印象的なサッカーは、マドリーに別次元で試合と繋がることを要求した。芸術家が創造的な恍惚の瞬間にしか披露できないような狂信的な集中力が必要だった。

 侵略者としての相手、脅威としてのボール。シティが許さなかったため、それ以外の要素は存在しなかった。観客はバックグラウンドノイズに過ぎず、戦術は相手の猛攻の前ではカウントされない情報の一部だった。万が一、すべてがうまくいかないという結末は、超集中状態では考慮すらされなかった。

 苦しまぎれにシティの攻撃を凌ぐたびに、それがマドリーに残された最後の抵抗のように見えた。しかし、まるで守備のメカニズムというロープを張り直すかのように、次のシティの猛攻では再び全員が完璧な準備態勢を整えた。

 クルトワもミリトンもアラバもチュアメニもいなかったが、そこには、強靭なメンタルを持って魔法のような結末を自覚して戦う誇り高きチームの姿があった。勝利の女神からも敬われ、見守られているような長年にわたって築き上げてきた歴史への確たる自信が垣間見えた。
 

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