どこよりも詳しい「アントニオ・コンテの履歴書」。チェルシー転身の理由、キャリア、戦術的志向、所望する新戦力

2016年04月05日 片野道郎

チェルシーからのオファーはまさに「してやったり」だった。

4月4日に来シーズンからのチェルシー監督就任が発表されたコンテ(左)。FIGCのタベッキオ会長(右)からの契約延長オファーを固辞し、プレミアリーグ挑戦を決めた。(C)Getty Images

 4月4日、かねてからの報道通りチェルシーがアントニオ・コンテ(現イタリア代表監督)の招聘を発表した。来シーズンからの3年契約で、年俸は500万ポンド(約8億5000万円)と見られている。
 
 プレミアリーグ挑戦を決めた理由、選手&監督としてのキャリア、志向するスタイル&戦術、チームマネジメントの手法、予想される今夏の補強という5項目で、チェルシー新監督の特色を炙り出す。
 
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(1)イタリア代表からチェルシーに転身した理由
 
 まだ46歳のコンテにとって、イタリア代表監督というポストは、ユベントスを率いて3年間に渡って全力疾走してきた後に、気分を切り替えて新たな分野で経験を積むための機会という意味合いが強かった。
 
 このまま代表監督としてのキャリアを続けていく意思は最初からなく、この経験で監督としての"箔を付けた"後、再びクラブチームの監督に戻って今度はプレミアリーグなどの国際舞台で活躍したいというのが、当時も今も変わらない彼の"野心"なのである。
 
 2014年8月の就任時に、FIGC(イタリア・サッカー連盟)のカルロ・タベッキオ会長が4年契約を提示していたにもかかわらず、2年契約にこだわったのも、A代表監督として試合の視察を中心とした日々を送る中で「毎日ピッチに立ってチームを指導する生活が懐かしい」と一度ならずコメントしてきたのも、そしてEURO2016後の契約満了が視野に入ってきたここ数か月、タベッキオ会長からの契約延長オファーに対して保留という態度を続けてきたのも、すべてそれが理由だ。
 
 つまるところコンテは事実上、「2016-17シーズンからの監督オファーを募集中」というサインを誰にでもわかる形で発しながら、代表監督の仕事を続けてきたわけだ。
 
 したがって、プレミアリーグ有数のメガクラブであるチェルシーからのオファーは、文字通り"渡りに船"だった。レアル・マドリーやバイエルン、マンチェスター・ユナイテッドといった歴史と伝統を誇るスーパーエリートクラブが、そのキャリアから見てまだ"高嶺の花"だと考えれば、プレミア新興勢力のトップに立つチェルシーは、望みうる最高のチョイスだと言っていい。コンテとしてはまさに「してやったり」だろう。
 

次ページ大抜擢されたユーベで復権の立役者となり一気に名を揚げる。

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