【イタリア代表】新機軸3-4-3の大きな収穫と残された課題。「当確の16人」と残る7枠の行方は?

2016年03月31日 片野道郎

コンテ監督が最終形として選んだのは、「ハイブリッド」の3-4-3。

スペイン戦で巧みな飛び出しから先制点を叩き出したインシーニェ(中央)。ドリブルでの仕掛けと思い切りの良いシュートという持ち味も随所で見せた。(C)Getty Images

 3月24日のスペイン戦は90分を通して攻勢を保っての引き分け(1-1)、5日後のドイツ戦は一方的に振り回されての惨敗(1-4)。EURO本番に向けた最後のテストとなったイタリア代表の2つの強化試合は、内容・結果ともきわめて対照的だった。
 
 就任後の1年半で、3-5-2、4-3-3、4-2-4という3つのシステムを使ってきたアントニオ・コンテ監督だが、本番直前になって最終形として絞り込んできたのは、そのいずれでもない、しかしそれぞれのシステムの長所をハイブリッド的に合わせ持った3-4-3だった。
 
 このシステムは、攻守それぞれの局面で流動的に機能できるところが長所。守備の局面では、サイドハーフを最終ライン、ウイングを中盤のラインに戻して5-4-1のコンパクトなブロックを形成することで、中央の厚みを確保しながらサイドでも数的不利にならずにすむ。攻撃に転じれば、サイドハーフとウイングの連携によるサイドアタック、そのウイングが内に絞りCFと絡んでのコンビネーションと、幅と奥行きの双方を確保できる。
 
 こうしたシステムとしての戦術的特徴に加えて、CBにレオナルド・ボヌッチ、ジョルジョ・キエッリーニ、アンドレア・バルザーリというトップクラスの3人を擁する一方でSBに人材を欠き、中盤から前のサイドプレーヤーは比較的豊富、さらにCFもタレント不足という現在のイタリア代表の戦力的事情も、コンテ監督がサイドに攻撃的なプレーヤーを多く配置できる3-4-3を最終形に選んだ理由だろう。
 
 スペイン戦では、この3-4-3の戦術的特徴がポジティブな形で表われた。チーム全体を押し上げて前線からアグレッシブなプレスをかけ、ビルドアップの起点を潰してポゼッションを分断し、高い位置でボールを奪って反撃に転じるという流れを作り出せたのだ。
 
 これは、スペインのプレーリズムが遅くインテンシティーでイタリアが上回っていたのに加え、システムの噛み合わせ上(スペインは4-3-3)、イタリアのサイドハーフが高めの位置取りをしやすかったのが大きかった。チームの重心を高めに保ち、守備の局面でも前に詰めながらコンパクトな陣形を保って戦えたのだ。

次ページドイツとのクオリティーの差は歴然だった。

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