【サッカーダイジェストの視点】シリア戦の転機となったリスキーな“ボランチ原口”。この新機軸は柏木へのメッセージか?

2016年03月30日 広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)

決定機の数を考えれば、7、8点取ってもおかしくない内容。

シリア戦で代表通算100試合出場を達成した岡崎(9番)。序盤から果敢にゴールを狙ったが、数ある決定機をモノにできなかった。写真:佐藤 明(サッカーダイジェスト写真部)

 5日前のアフガニスタン戦の試合後、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は「美しい勝利」と5-0の完勝を称えていた。そのアフガニスタン戦と同じスコアだったシリア戦での記者会見でも、指揮官は同じ言葉を繰り返し、さらに「スペクタクルだったとさえ、言えるかもしれない」と付け加えている。

【W杯アジア2次予選第8戦・PHOTOハイライト】 日本 5-0 シリア(2016年3月29日)

【シリア戦|香川PHOTO】背番号10の鮮烈ボレーを連続写真でプレーバック!

 グループ1位の座を賭けて挑んだシリア戦で、勝点1差で上回る日本は相手を圧倒した。前半はオウンゴールによる1点のみと攻めあぐねたが、後半は一転、ゴールラッシュを披露する。香川真司が鮮やかな反転シュートを突き刺すと、カウンターから本田圭佑がヘディングシュートを沈め、香川が再び、ネットを揺らし、最後は途中出場の原口元気が長友佑都のクロスを頭で押し込んだ。
 
 この試合で代表通算100試合出場を達成した岡崎慎司にゴールが生まれなかったのは、残念な結果ではある。ハリルホジッチ監督も「彼には1点を取ってほしかった」とコメントしているほどだ。
 
 もっとも、香川や本田など"決めるべき選手"が決め、2次予選の計8試合を通じてひとつの失点も許さず、7勝1分、27得点・0失点という堂々の成績で最終予選に駒を進めたのだ。指揮官が上機嫌になるのもうなずける。
 
 大量得点を奪った反面、モノにできなかった決定機の数も少なくなかった。よりシビアな戦いが予想される最終予選では、チャンス自体が少なくなる。たった一度の好機が勝敗を左右する試合もあるだろう。アフガニスタン戦でも最初の1点(43分)を奪うまでに時間がかかっている。シリア戦は決定機の数を考えれば、7、8点取ってもおかしくない内容だった。
 
"仕留める力"は課題だが、ただシュートに至るまでの過程には見るべき点が多かった。コンパクトな陣形を保ち、選手同士の距離感を意識して、3人目の動きを織り交ぜながら、ワンタッチ、ツータッチでテンポ良くボールを動かす。連動した崩しはチームが目指すべきスタイルであり、息の合ったコンビネーションは随所で見られた。
 
 7分、相手陣内の右サイド深くでボールをキープした酒井高徳が香川に預け、すかさずリターンをもらうと、後方から攻め上がってきた長谷部誠にダイレクトではたく。ニアサイドに侵入した長谷部のマイナス気味のパスを受けた岡崎のシュートは枠を捉え切れなかったが、スピーディな連動性にシリアのDFたちはまるでついていけていなかった。
 
 18分の宇佐美貴史→本田→香川→本田の崩しや、26分には本田→岡崎→本田→酒井高とつないで決定機を演出。いずれも得点には結びつかなかったものの、「良い距離感でやれた」と岡崎が言うように、コンビネーションの質は確実に向上していると言えるだろう。

次ページ山口の負傷交代→4-4-2へのシフトチェンジも見てみたかった。

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事