【識者の視点】なでしこの敗退、U-23の勝利からフル代表はなにを教訓とすべきか?

2016年03月23日 加部 究

大筋のスタンスとして守りに回ったことが「なでしこの悲劇」につながった。

なでしこジャパンを率いた佐々木監督(左)とU-23日本代表を率いた手倉森監督。明暗を分けたふたつのチームから得られる教訓とは?(C) SOCCER DIGEST

 五輪予選は男女が対照的な立場で臨み、完全に明暗を分けた。
 
 世界の舞台で3大会連続して決勝進出を果たしていた女子は、少なくともアジア大陸内では本命視されていた。ただしランキングや実績は最上位でも、黄金時代には陰りが見えていた。2008年北京五輪でベスト4に進出したなでしこジャパンは、3年後に完全なダークホースの立場からドイツ女子ワールドカップで優勝を飾った。ただしアメリカを初めとする強豪国との力の差は、むしろ翌12年のロンドン五輪(準優勝)のほうが縮まっており、ここまでは上げ潮だった。
 
 だがここから成長は止まった。もちろん佐々木則夫監督は意識的に代謝を図ろうとしたが、予想以上に次の世代を取り込むのが難しかった。もともとなでしこが実践して来たのは、圧倒的な身体能力のハンディを、競技の特殊性に焦点を絞り組織力に昇華することで補うスタイルだった。
 
 ただし組織の精度を追求するわけだから、当然新しいコマを組み込むには時間を要し、結果が出ていればメンバーも動かし難い。その間にライバル国からはターゲットとして研究され、戦術的な長所も盗まれた。最終ラインからのつなぎを相手が前がかりで潰しに来ると、ロングボールで裏を狙う戦略に切り替えたわけだが、それでは逆にロングフィードや走力という不得意な部分で勝負をしなければならなくなった。
 
 結局あまり伸びしろが望めないメンバー構成で、リスク回避的な戦略に逃げた。つまり大筋のスタンスとして、守りに回ったことが悲劇につながり、それは黄金時代を築いたチームの宿命とも言える。世界と欧州を制し、無敵に近い印象を与えた男子のフランスやスペインも、最後はワールドカップでグループリーグ敗退の憂き目にあっているのだ。
 

次ページ最後の最後まで競争を促し、潜在能力を引き出したU-23代表。

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