【現地発】日本では報じられていない「トッティ騒動」の核心。優先すべきは“チームの勝利”か、“レジェンドへのリスペクト”か――

2016年02月24日 片野道郎

「この状況は我慢できない」と不満を漏らし……。

昨年9月のサッスオーロ戦でクラブ通算300ゴールを達成したトッティ。今シーズンはこの1得点のみに留まっている。(C)Getty Images

 ユベントスとナポリの勝点1差の首位争いが白熱し、チャンピオンズ・リーグ(CL)が再開してシーズンが佳境に入ったイタリア・サッカー。しかし先週末のスポーツマスコミを独占したのは、まったく別の話題だった。
 
 ローマのレジェンド、フランチェスコ・トッティが、試合前日に受けたテレビの単独インタビューで「不適切な発言」をしたのを理由に、2月21日のパレルモ戦(セリエA26節)でベンチ入りメンバーから外された事実が大きく取り上げられ、それをめぐって侃々諤々の論争が展開されたからだ。
 
 この一件をめぐっては日本でも様々な報道がされているが、いずれも断片的かつ断定的で、問題の全体像をニュートラルに伝えるものは多くないように見える(少なくともウェブ上で読める日本語報道には)。
 
 そこで当稿では何よりもまず、時系列で事実関係を整理して問題の全容を把握する助けとしたい。
 
 すべては、パレルモ戦を翌日に控えた2月20日、トッティが国営放送局『RAI』の単独インタビューを受けたところから始まった。
 
 昨年9月に39歳となった今シーズンのトッティは、筋肉系の故障で前半戦をほぼ棒に振り、年明けに戦列復帰を果たしてからもほとんど出場機会が得られない状況が続いていた。
 
 とりわけ、監督がリュディ・ガルシアからルチアーノ・スパレッティに代わった1月中旬以降、ピッチに立ったのは1月30日のセリエA22節フロジノーネ戦(59分に途中出場して1アシスト)、そして2月17日のCLラウンド・オブ16のレアル・マドリー戦(86分に途中出場)の2試合のみ。トッティはこの状況について、インタビューで次のように語った。
 
「コンディションはもう戻っている。出場していないのは、純粋に監督のテクニカルな選択が理由だ。もっと試合に出たい、と言うつもりはない。調子はいい。あとは監督の選択だ。僕はいつでもそれを尊重してきた。でも、自分はまだプレーできると思っている。だから試合に出たいのは当然だ。頭と身体がもっとプレーしたいと言っている以上、それを止める権利は誰にもない」
 
「今までのところはローマが僕にとって唯一のチームだ。でもまだプレーを続けたいし、フィジカル的にもそれは可能だと思う。だから、すべてのドアを開いたままにしておく。あらゆる可能性を検討するよ。今後のことは6月に決断すると以前から言っている。もう少しだけリスペクトを求めたいだけだ。これまでローマのために果たしてきた貢献に対するね。こういう風にキャリアを終えるのはちょっと惨めだ。僕自身にとっても、僕がこれまで得てきた評価に対してもね」
 
「試合に出たいと言うためにここに出てきたわけじゃない。でもこの状態はもう我慢できない。僕も僕の周りにいる人たちもね。スパレッティとの関係? 普通に挨拶を交わす、監督と選手の関係だ。それはそれで問題ない。ただ、新聞で読まされたいろいろなことを、面と向かって言ってくれればよかったのにとは思う。でも彼を批判しているわけじゃない」

次ページスパレッティがトッティを監督室に呼び出した。

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