ミラン番記者の現地発・本田圭佑「自らが渇望していたゴールをついに――。今や誰もがケイスケに夢中だ」

2016年02月17日 マルコ・パソット

「HONDA車」はディーゼルエンジンなのかもしれない。

2月14日のジェノア戦の64分、ゴールまで約35メートルの位置から左足のミドルを叩き込む。セリエAでは実に16か月ぶりの得点だった。写真:Alberto LINGRIA

 物語のタイトルは「みんなケイスケに夢中」。そんなところだろうか。
 
 しかし、どこかで見たようなストーリーだ。それもそもはず、すでにこの物語はシーズン3に突入している。そしてこのドラマは毎回、ほぼ同じ流れだ。
 
 最初は監督をなかなか納得させることができず、不遇の時期が続く。しかし、それでも忍耐強く練習を続けるうちに、信頼を勝ち取っていく。クラレンス・セードルフしかり、フィリッポ・インザーギしかり、そして今のシニシャ・ミハイロビッチしかり。
 
 いつもこんな流れなのは、ライバルの存在以上に、この「HONDA車」がディーゼルエンジンだからかもしれない。つまり、力を発揮するまでに時間がかかってしまう。しかし、一度温まってしまえば、突如として高い性能を発揮しはじめるのだ。
 
 率直に言って、11試合連続でベンチスタートだった頃(9月下旬から12月中旬)、本田がミランの主役に返り咲くと予想する者は、一人もいなかった。それどころか、監督やクラブ方針を非難した10月の爆弾発言のあとは、もう「完全に終わり」だとさえ思われていた。
 
 ミハイロビッチの目に本田の姿はほとんど映っておらず、彼の中の選手ヒエラルキーで背番号10は最下位。試合終盤にたまに起用しても、満足のいくパフォーマンスを見せることはなかった。
 
 しかし、覚えているだろうか。この"暗黒の時期"でも、私はこのコラムでこう主張し続けてきた。それでも本田は今の状況を覆せる根気を、必ずまた信頼を取り戻せる能力を持っている、つまり主役に返り咲くことができる――と。
 
 だからこそ、周囲がどんなに騒いでも、私は本田が1月に退団しないと信じていたし、実際にそう主張してきた。この夏に向けては、残留よりも退団の可能性のほうが高いと言われているが、それはまた別の話だ。シーズン終了までの残り3か月間は、落ち着いてプレーできるだろう。

次ページエンブレムへの口づけはミランへの「愛情」、「帰属意識」、「感謝」を象徴。

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