【リオ五輪予選】「焦らなくなった」「やり切ろう」。手堅く大胆な手倉森采配は選手に何をもたらしたか?

2016年01月29日 飯尾篤史

守備力と粘り強さなくしてアジアのトーナメントは勝ち抜けない。

手堅さと大胆さを兼ね備えた采配で五輪出場に導いた手倉森監督。まずは失点しない守備力や粘り強さをチーム作りのポイントに挙げた。写真:佐藤 明(サッカーダイジェスト写真部)

 朝食を摂ったあと、自分の部屋に戻ってベッドの上で横になり、1時間ぐらい頭のなかでその日の試合について思いを巡らす。
 
 スタメンはすでに決めてある。思い描くのは、試合で起こり得る、あらゆる場面を想定したシミュレーションだ。相手チームの戦い方、それに対しての対応の仕方、試合展開、選手交代のパターン……。
 
 これが、手倉森誠監督にとっての試合当日のルーティーンだ。
 
「スタメンは何戦、何戦、何戦とあらかじめ書いていて、そのとおり進められた。だから、なんとなくイメージを持っていて、ここまではそのイメージどおりに進んでいる。ただ、点の取り方については、あまりに劇的すぎてイメージにはなかったですけど(笑)」
 
 リオ五輪アジア最終予選の準決勝でイラクを2-1と下し、6大会連続の五輪出場権を獲得した手倉森ジャパン。2020年は東京で開催されるため、日本サッカー界にとっては7大会連続出場を確定させたことになる。
 
 ミッション達成の要因を探る時、最も大きいのが、手倉森監督のチーム作りやゲーム運び、マネジメントだろう。
 
 手堅さと大胆さと――。
 その相反するふたつの側面がくっきりと浮かび上がる。 
 
 手倉森監督は14年1月のチーム立ち上げ当初から「失点しない」という点を重視してチーム作りを進めてきた。
 
 アジアのライバル国が育成に力を注ぐようになり、日本はU-19アジア選手権で3大会連続(当時)、ベスト8で涙を呑んでいる。守備力と粘り強さなくして、アジアのトーナメントは勝ち抜けない。
 
 また、テクニックのある選手たちがその技術を発揮する状況を作るためにも、まずは高い守備意識が必要だという考えから、「柔軟性と割り切り」や「取れなくても取らせるな」を合言葉に、手堅いチーム作りを進めてきた。
 

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