【連載】小宮良之の『日本サッカー兵法書』 其の五十五「実は日本人には“守り抜く”より“攻め抜く”が向いている」

2016年01月28日 小宮良之

デポルティボは「籠城出撃戦」によってバルサから勝点1をもぎとった。

昨年12月のバルサ戦でデポルティボは、分厚い守備ブロックで敵の強力攻撃陣を封じる一方、トップ下+2トップが軸の逆襲速攻を機能させ、実力差を考えれば勝利に近い引き分けを掴み取った。(C)Getty Images

 格上との試合では、守りを固めるのが戦いの定石の一つだろう。しかし、それが"城にこもる"だけでは、防御を破られるのは時間の問題となる。守備は必ず疲弊するからだ。
 
 サッカーにおいて守り勝つには、攻めてゴールを奪う"装置"を準備しなければならない。そもそもの話、サッカーは「多くゴールをしたチームが勝ち」というスポーツである。この鉄則を忘れてはならない。
 
 昨年12月12日のリーガ・エスパニョーラ15節、バルセロナの本拠地カンプ・ノウに乗り込んだデポルティボは、二度に渡って追い付き、2-2で引き分けている。これは一つの快挙と言えるだろう。実力差を考えれば、5-0のような大敗を喫しても不思議ではない。
 
 デポルティボの指揮官ビクトール・サンチェスは、その8日後にクラブワールドカップで世界王者に輝くバルサとの一戦で、普段使っている4-2-3-1や4-4-2ではなく、イタリア色の強い戦術システムを採用。4-3-1-2(2015年シーズンにはFC東京のマッシモ・フィッカデンティ監督もしばしば採用)という布陣で、4DF+3MFの2ラインで守備ブロックを作り、ひたすらバルサの攻撃を受け止めたのだ。
 
 しかし、最終ラインと中盤がそのリアクション運動を続ける中、トップ下と2トップの3人はなるべく前線に留まってカウンターを狙った(トップ下はアンカーを蓋、2トップは敵最終ラインのビルドアップをできるだけ塞ぐ守備タスクはあった)。この"籠城出撃戦"によって2-2のタイスコアに持ち込み、バルサに一泡吹かせた。
 
 4-4-1-1あるいは5-4-1のフォーメーションのほうが守備ブロックは厚みを増し、ディフェンスの強度は高まる。しかし、前線の人数が1枚や2枚など手薄だとカウンター攻撃に繋がりにくい。結局は敵に押し込まれ続けて消耗し、失点を待つのみとなる。
 
 つまり、この日のデポルティボが採った戦術は、カウンターを発動できる最低限の攻撃態勢を整えることで敵の勢いも減速させる、攻守一体の戦略だったと言えるだろう。

次ページ日本人にイタリア人のような心身ともにふてぶてしい守備はできない。

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