用意周到なスウェーデンには通用せず。ピッチ内の解決力や個人戦術。大健闘のなでしこJに課せられた課題

2023年08月14日 河治良幸

試合を重ねるごとに注目を集める

女子W杯でベスト8敗退のなでしこJ。悔しい結果も、世界に与えた衝撃は小さくなかった。(C)Getty Images

 ニュージーランド&オーストラリアで開催されている女子ワールドカップの準々決勝で、なでしこジャパンはスウェーデンに1-2で敗れて、大会から姿を消すことになった。

 あれだけピッチで躍動して、大会で盛り上がりを見せていたところから、敗退が決まって翌朝にはニュージーランドを発つという情報を知らされて、少し放心状態になってしまった。取材する側がそうなのだから、選手やチームスタッフはどういう思いだろう。

 ただ、この大会で間違いなく、なでしこジャパンは女子サッカー界における評価を高めた。準々決勝で敗れはしたものの、グループステージのザンビア戦(5-0)、コスタリカ戦(2-0)、スペイン戦(4-0)、ラウンド16のノルウェー戦(3-1)と試合を重ねるごとに注目を集めていった。

 組織的で、それでいて個人も輝く彼女たちのパフォーマンスは、地元ニュージーランドのファンを虜にし、海外メディアからも優勝候補に推す声が増え、ブックメーカーの優勝オッズも引き上がった。

 ラウンド16までの見事な戦いぶりが、結果的には地力のあるスウェーデンに、なでしこジャパンを強く警戒させることになったかもしれないが、ベスト8という結果とは別に掴めたものがあると考えている。
 
 かくいう筆者も、ベスト8という結果は想定内だった。グループステージの組分け、A組から勝ち上がってくるラウンド16の相手が、日本より"格上"ではないことが分かっていたからだ。そして準々決勝ではアメリカ、スウェーデン、オランダという決勝でもおかしくない相手との戦いが待つことも予想できた。

 しかし、ここまで世界で称賛を浴びるパフォーマンスで勝ち上がってくることは驚きだった。ただ、今振り返ると、その指標は昨年のU-20女子W杯で準優勝した時に表われていたように思う。

 決勝ではスペインに惜しくも敗れてしまったが、大会前から5バックに変更し、しっかりとミドルブロックを作ったところから組織的にボールを奪い、素早くゴールに攻めて行く。

 若きなでしこが示したエビデンスが、ほぼ同じスタッフが率いるA代表に引き継がれるような形で、W杯まで残り1年でのチーム作りに活かされた。結局、戦力としてメンバーに食い込めたのは、藤野あおば(ベレーザ)、石川璃音(浦和L)、浜野まいか(ハンマルビー)の3人だったが、このU-20女子W杯を経験した選手たちが、なでしこジャパンのラージファミリーになっていたことは興味深い。

【PHOTO】長谷川唯のダブルピース、猶本光の決めカット、熊谷紗希のキラキラネイル...なでしこジャパンFIFA公式ポートレートギャラリー

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