レジェンドに並ぶ大会5得点、三度のPOM。“スーパーヒロイン” 宮澤ひなたがこだわるスピードの質

2023年08月07日 河治良幸

「嬉しいですし...嬉しいです」

自慢のスピードを武器に、世界の舞台で躍動する宮澤。(C)Getty Images

 なでしこジャパンは女子ワールドカップのラウンド16で強豪ノルウェーを3-1で破り、準々決勝に進出。プレーヤー・オブ・ザ・マッチ(POM)には、自身の今大会通算5点目となるチーム3点目を記録した宮澤ひなたが選ばれた。ここまでの4試合中で3回目だ。

 池田太監督とともに、記者会見の壇上にあがった宮澤も、報道陣の反応を見ながら照れ笑いを浮かべていた。今回はJFA(日本サッカー協会)のはからいで、試合後のミックスゾーンですぐ選手たちが個別の囲み取材に応じてくれたあとに、会見に来るという方式が取られている。そうなると囲み取材と会見の両方で、宮澤に2回聞くというのが日常の風景になっているのだ。

「本当に素直に嬉しいですし、まさかここまでっていうところはありますけど。本当にチームみんなのおかげで取れた点だと思うので。ここまで来たからにはもっと得点が欲しい」

 そう語った宮澤は、なでしこジャパンが世界一になった2011年大会で澤穂希が記録した5得点に早くも並んだことを改めて聞かれると、池田監督と目を合わせながら「嬉しいですし...嬉しいです」と回答。実は囲み取材の時点で、その事実を全く知らなかったと宮澤は明かしている。

「いやなんか、ちょっと頭が追いつかないというか。自分自身もここまで点を取れるとは思ってなかったですし、あのシュートシーンもあまり覚えてない」

 宮澤も自分自身に驚きを隠せない状況となっている。もっとも、冷静に振り返ると、ノルウェー戦は得点シーンだけでなく、3得点の全てに絡む活躍を見せており、POM選出も当然だった。
 
 守備時は中盤からイングリッド・シルスタッド・エンゲンが下がり、5バックで固めてくる屈強なノルウェーを相手に、「ボールを持ってる時間帯が結構長かったので。なかなか崩せないシーンがずっとあって」と宮澤も簡単ではなかったことを強調するが、そのなかで一つひとつのプレーに狙いが見られた。

 1点目は宮澤のクロスがエンゲンのオウンゴールを誘い、1-1から勝ち越しに成功した2点目も、左の遠藤純からバイタルエリアでパスを受けて、ボックス内に飛び出した長谷川唯に渡す。折り返しをカットしたヴィルデ・ボー・リサにプレッシャーをかけて、ミスを誘発。右サイドから飛び出してきた清水梨紗のゴールをお膳立てする形となった。

 そして終盤に勝負を決定づけた3点目は、宮澤らしい見事な飛び出しから生まれた。

 右サイドでこぼれ球を拾った清水を起点に、藤野あおばがボールを持つと、途中出場の植木理子が右斜めに飛び出す。この動きにノルウェー守備陣が引きつけられることで生じた中央のスペースを、左シャドーの宮澤は逃さず、中に絞った右サイドバックのテア・ビエルデの外側から抜け出して、最後は左足で175センチのGKアウロラ・ミカルセンの足もとに流し込んだ。

 効果的な動き出しを見せた植木は、「自分の動き出し次第で相手を動かせると思ったので。そこは本当にはっきり自分が動くことで、味方の選手、今回だったら、ひなたが走ってくれている。良い関わり方ができた」と振り返った。

【PHOTO】長谷川唯のダブルピース、猶本光の決めカット、熊谷紗希のキラキラネイル...なでしこジャパンFIFA公式ポートレートギャラリー

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