【セリエA現地コラム】ユーベの新戦力ディバラ――「テベスの後継者」がいよいよ本領発揮!

2015年12月11日 片野道郎

アッレグリ監督の慎重な起用法には理由が…。

15節のラツィオ戦では鮮やかなボレーで2点目を奪取。ユーベの反抗の旗手は、このディバラだ。(C)Getty Images

  開幕から8試合は2勝3分け3敗で14位に低迷していたユベントスが、そこから1か月半で7戦6勝と一気に復活。気が付けば、首位インテルとわずか6ポイント差の5位まで順位を上げてきた。
 
 その立役者が、今夏パレルモから加入した22歳のアルゼンチン代表FWパウロ・ディバラだ。序盤戦はスタメンを外れてベンチを温める機会が多かったものの、同じく新戦力のマリオ・マンジュキッチとの2トップという起用法が固まった10月半ば以降は、ほぼ全試合にスタメン出場。直近7試合で4得点・3アシストという目覚ましい活躍を見せている。
 
 177センチ、69キロという華奢な体格ながら、爆発的なスピードとキレのいい身のこなし、際立ったサッカーセンス、そして繊細な左足のテクニックを備えた一線級のタレント。
 
 オープンスペースでのドリブル突破から、密集したエリア内でのコンビネーションまで、攻撃のあらゆるシチュエーションで違いを作り出せるポテンシャルの持ち主だ。
 
 そのクオリティーは、昨シーズンにパレルモで見せた13得点・10アシストという華々しい活躍で証明済み。さらにボーナスを含めると4000万ユーロ(約56億円)という高額の移籍金もあって、昨シーズン限りで母国アルゼンチンに戻ったカルロス・テベスの後継者として大きな期待がかけられていた。
 
 しかし、開幕当初はチームが深刻な不振に陥る中で思ったよりも出場機会が少なかったせいもあり、マスコミからはマッシミリアーノ・アッレグリ監督に対して、
「あれだけ高い金を払った選手をどうして積極的に起用しないのか」
という批判が相次いだ。
 
 古巣パレルモのマウリツィオ・ザンパリーニ会長に至っては、
「ユベトスはディバラを潰そうとしている」
 と、噛みつく始末だった。
 
 アッレグリ監督の慎重な起用法には理由があった。
 若手はかけられる期待が大きければ大きいほど、そのプレッシャーに潰されて実力を発揮できず、その結果自信を失って長いスランプに陥るという悪循環のリスクを抱えている。
 
 それを避けるために、時間をかけてチームの戦術に馴染ませつつ段階的に起用し、間違いなくポジティブな結果を出せると確信できるレベルまで成長させてから、大きな責任がのしかかる立場でピッチに送り出す。アッレグリは以前からこの考え方を貫いてきたのだ。
 
 ミラン時代のマッティア・デ・シリオやステファン・エル・シャーラウィ、そして昨シーズンの前半をフェルナンド・ジョレンテの控えとしてベンチで過ごしながら、後半に大ブレイクしてCL決勝進出の立役者となったアルバロ・モラタはその好例だ。
 

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