【現地特派レポート】多くの逸材を生んだドルトムント・アカデミーの最新育成メソッド

2015年12月03日 高橋泰裕(ワールドサッカーダイジェスト)

育成はクラブの未来を左右する重要な要素。

ゲッツェ(左)やロイス(右)、リュディガーといった代表クラスをはじめ、ドルトムント・ユース出身者の多くが国内外のトップリーグで活躍している。 (C) Getty Images

 マリオ・ゲッツェやマルコ・ロイスを輩出したドルトムントのユースアカデミー。ワールドクラスの逸材を生み出す秘訣は、どこにあるのか ―。育成部門の責任者を直撃取材した、ワールドサッカーダイジェスト特派の現地レポートをお届けする。
 
――◆――◆――
 
 取材に訪れたドルトムントのユースアカデミーは、本拠地ジグナル・イドゥナ・パルクから車で約5分のブラッケル地区にある。
 
 トップチームの練習場に隣接するユース専用の施設には4面のフルコートと1面のハーフコートがあり、最新の機器を揃えたトレーニングジムも併設。ここでU-9からドルトムントⅡ(U-23)までの計11チーム、総勢220人がトップチーム昇格を目指して日夜ハードな練習に取り組んでいる。
 
 1997年にトヨタカップ(現クラブワールドカップ)優勝を成し遂げたレジェンド、ラース・リッケンも、この場所―練習場の外観はすっかり様変わりしたが―から大きく羽ばたいたひとりだ。
 
 90年に14歳でドルトムントの下部組織に入団し、17歳でプロ契約を締結。3年目の96-97シーズンはチャンピオンズ・リーグ決勝でユベントス相手に鮮やかなミドルシュートを決め、一躍時の人となった。
 
 そのリッケンがドルトムントの育成部門のコーディネーターに就任したのは、32歳での引退をおよそ半年後に控えた08年6月。以来、多くの若手をプロの世界に送り出してきた。
「我々にとって育成は、クラブの未来を左右する極めて重要な要素です。目標は、ここからジグナル・イドゥナ・パルクでプレーする選手を少しでも多く輩出すること。ユース出身者がトップチームにいることは大切です。サポーターの応援にも熱が入りますから」
 
 ドルトムントの下部組織が輩出した近年の最高傑作と言えば、09年にトップ昇格したゲッツェ(現バイエルン)だろう。プロデビュー前から「100年にひとりの逸材」と持て囃された天才アタッカーは、その豊かな才能をこのユースアカデミーで育み、11~12年のブンデスリーガ連覇をはじめ、数々の栄光をチームにもたらした。
 
 ゲッツェは13年7月にバイエルンに移籍したものの、現在トップチームにはロイス、ヌリ・シャヒン、マルセル・シュメルツァーという3人の下部組織出身が在籍。その他にも、ケビン・グロスクロイツ(現ガラタサライ)、ダニエル・ギンチェク(現シュツットガルト)、アントニオ・リュディガー(現ローマ)などが、このユースアカデミーから巣立っていった。
「ここの卒業生の40人ほどがブンデスリーガの1部または2部でプレーしています。シャルケと並んで、ドイツ国内で最も優秀なアカデミーのひとつと言っていいでしょう」
 
 リッケンはそう胸を張る。

次ページ05年の破産危機が大きな契機となり、「育成重視」の路線へ舵を切る。

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事