【セリエA現地コラム】首位攻防戦で痛恨の退場を食らった長友。イタリアにおける「ファウルの使い方」とは?

2015年12月02日 片野道郎

二度のファウルはいずれも情状酌量の余地があるが…。

ナポリ戦の前半44分、長友は2枚目の警告でレッドカードを食らう。セリエAでは通算3度目の退場となった。(C)Getty Images

 11月30日、マンデーナイトに開催された首位攻防戦のナポリ対インテル戦(セリエA14節)。2-1で勝利したナポリが、インテルを抜き去って1990年以来約25年ぶりの単独首位に立ったこの試合で、展開を最も大きく左右したのが、左SBで先発出場した長友佑都の退場劇だった。
 
 ナポリの1-0で迎えた前半終了間際の44分、右サイドをドリブルで抜け出そうとしたアランへのレイトタックルで、2枚目のイエローカードを受けたのだ。首位を争う重要な試合で、後半の45分を10人で戦うという困難な状況にチームを追い込んでしまった。
 
 このところようやくコンスタントな出場機会を与えられるようになり、ローマ戦(11節)では両翼のモハメド・サラーとジェルビーニョを抑え込むなどポジティブなパフォーマンスを重ねて、ロベルト・マンチーニ監督の信頼を得つつあっただけに、痛恨の失態だったと言わざるをえないだろう。
 
 当然ながら試合翌日のマスコミ各紙は、10点満点で5点から4点というネガティブな採点を付けて、たった9分間で二度の警告を受けた軽率さを批判的に取り上げた。
 
 とはいえ、情状酌量の余地がないわけではない。警告の対象となった二度のファウルはいずれも、イエローカードに値するほど悪質なものではなかったと見る向きも少なくないからだ。
 
 35分にホセ・マリア・カジェホンに対して犯した一度目のファウルに関しては、マンチーニ監督が試合後のインタビューで、「あれはカジェホンのシミュレーションだった」と語っている。
 
 後方からの縦パスをゴールに背を向けたままワンタッチでさばいたカジェホンに対して、明らかに遅れたタイミングで当たりにいった長友のプレーは、明らかなファウルだ。しかし左膝が臀部に軽く当たっただけで大仰に倒れ込んだカジェホンの振舞いがなければ、カードが出ていたかどうかは疑わしい。
 
 その9分後のアランへのスライディングタックルも、タイミングが遅れたのは確かだが、それを感じた長友は両足を曲げて削る意思がないことをはっきりと示していた。「反スポーツ的行為にあたる悪質なファウルだと解釈するのは厳し過ぎる」という声も、TV解説者や翌日の新聞記事の中には少なくなかった。

次ページイタリアではファウルの“使い方”が重視される。

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