【クラブW杯来日記念!短期集中連載】バルサ戦士の素顔――Vol.5 スアレス、アドリアーノ、A・ビダル

2015年11月27日 山本美智子

スアレス「バルセロナとの不思議な赤い糸」

類稀なボディーバランスと抜け目のなさでゴールを量産する世界最高クラスのCF。スアレスはネイマールやメッシとの連携も良好だ。(C)Rafa HUERTA

  12月10日に開幕するクラブワールドカップで来日を果たす欧州王者バルセロナ。この言わずと知れたタレント軍団に所属する選手たちの、「素顔」に迫る短期集中連載だ。
 
 その第5回は狡猾な点取り屋ルイス・スアレス、マルチな能力が売りのアドリアーノ、そして今夏に13年ぶりにバルサに復帰したアレイクス・ビダルだ。
 
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Luis SUAREZ
ルイス・スアレス

背番号9/FW/ウルグアイ代表/1987年1月24日生まれ/182センチ・85キロ
 
 ルイス・スアレスとバルセロナは、奇妙な赤い糸で結ばれている。
 
 スアレスがバルセロナをはじめて強く意識したのが15歳の時。交際していた3歳下のソフィア・バルビさんが、両親の仕事の都合でバルセロナに移住してしまったのだ。
 
 1年後、16歳のスアレスはソフィアさんに会うためにバルセロナを目指して海を渡った。手持ちは兄パウロ(現在はエルサルバドル・リーグでプレーするプロフットボーラー)がくれたたった70ドルだけ。しかも、その全財産を旅の途中で紛失し、バルセロナ空港の税関で拘留される羽目になった。
 
 ソフィアさんがまだウルグアイにいた頃には、彼女に会うために山道を20キロ歩いたこともあった。それだけ惚れ込んでいたのだ。例え一文無しでも、バルセロナに行くのに躊躇は一切なかった。
 
 2人は09年に結婚し、今では娘と息子を授かった。幼い頃の出会いに感謝するスアレスは、こう公言して憚らない。
 
「彼女がいなければ、俺は正しい道を歩むことができなかった」
 
 スアレスの家庭は決して裕福ではなかった。9歳の時に両親が離婚。11歳の頃から家計を助けるために自動車整備工場で働いた。子供たちのバイトを嫌がる母親には、友達の家に遊びに行くと嘘をついて。
 
「家には足りないものだらけだったが、必ず一皿の食事はあった。サッカーをするためにやってきた犠牲は、それだけの価値があったと思っている。だから俺は、その一皿を手にするためにやってきたことを誇りにしている」
 
 そして、そんな辛い境遇で自暴自棄になりそうになった時期もあったスアレスをずっと支え続けてきたのが、ソフィアさんだった。
 
 三度の渡る愚行により今や「噛み付きスアレス」という有り難くない愛称が定着したが、努力家で真っすぐで、さらに不屈の闘志の持ち主なのは間違いない。

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