【セリエA現地コラム】得点王争いを演じる「超サプライズ男」カリニッチとは!?

2015年11月24日 片野道郎

彷彿とさせるのは、レバンドフスキだ。

セリエA13節のエンポリ戦では、2点ビハイドの46分から出場したカリニッチ。2ゴールを挙げてチームを敗戦の危機から救う。(C)Getty Images

 今シーズンのセリエA最大のサプライズは、パウロ・ソウザ新監督が率いるフィオレンティーナだろう。
 
 戦力的に見ると保有選手の市場価値の合計額がリーグで7番目という中堅クラブであるにもかかわらず、インテル、ナポリ、ローマというビッグクラブの中に割って入って首位争いを展開中。ヨーロッパ全体を見渡しても、その意外性の高さはプレミアリーグで首位に立ったレスターと双璧と言っていい。
 
 そのレスターとフィオレンティーナにはひとつの共通点がある。躍進の立役者が、これまで世界的には無名に近く実績もなかった「超サプライズ」と言えるストライカーだということだ。
 
 レスターはここまで13試合・13得点のジェイミー・ヴァーディー。そしてフィオレンティーナが、12試合で9ゴールを叩き出しているニコラ・カリニッチだ。ともにリーグの得点王争いを演じている。
 
 今夏にウクライナのドニプロからヴィオラ(フィオレンティーナの愛称)に加入したカリニッチは1988年生まれ、27歳のクロアチア代表だ。
 
 昨シーズンのヨーロッパリーグ(EL)決勝で先制ゴールを挙げるなど、ドニプロ躍進の主役となりようやく注目を集めるようになったとはいえ、それまでは移籍市場でもほとんど評価されない埋もれた存在だった。
 
 それを示すのが、フィオレンティーナが550万ユーロ(約7億7000万円)という格安の移籍金で獲得できたという事実。市場での評価が同程度なのは、アルベルト・パロスキ(キエーボ)やフィリプ・ジョルジェビッチ(ラツィオ)、レオナルド・パボレッティ(ジェノア)あたりだ。
 
 それが、そのほぼ10倍の市場価値があるゴンサロ・イグアイン(ナポリ)とトップスコアラーを争うだけの活躍を見せているのだから、驚きと言うほかない。
 
 186センチと大柄ながら、運動量がありスピードも備えているのが大きな強み。最前線でDFを背負ってロングボールを収め、チームの押し上げを助ける基準点として機能するだけでなく、下がってパスを受けたり、サイドに流れてスペースを作り出したりする動きも巧みだ。
 
 タイミングのいい裏への飛び出し、的確な読みとポジショニングに支えられたゴールへの嗅覚、さらには献身的なプレッシングと、現代のCFに求められるあらゆるプレーをレパートリーに持っている。タイプ的にはロベルト・レバンドフスキ(バイエルン)を彷彿させる万能型のストライカーだ。

次ページプレミア挑戦は2年で7ゴールに終わる。

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