特筆すべきは前田の“オン・ザ・ボール”の動き。旗手の戦術眼、古橋の決定力も見事だった【現地発】

2023年02月02日 元川悦子

足もとの技術レベルが上がり、多彩なプレーを披露

リビングストン戦で躍動した(左から)前田、古橋、旗手。(C)Getty Images

 昨年11~12月に開催されたカタール・ワールドカップ(W杯)の中断明け以降、1月末までで公式戦10戦無敗と凄まじい勢いを見せていたセルティック。ミッドウイークの2月1日にもスコティッシュ・プレミアリーグ第24節のリビングストン戦に挑み、3-0で圧勝した。

 リーグ戦の勝点も67まで伸ばし、2連覇へと大きく前進。この日は1月に加入した岩田智輝がリーグ戦デビューを果たすなど、新たなプラス材料もあった。

 このところの快進撃の原動力となっているのが、古橋亨梧、前田大然、旗手怜央の日本トリオだ。今季後半戦のチームは4-3-3がベースで、古橋が最前線、前田が左FW、旗手が左インサイドハーフに入る形になっているが、それぞれに躍動感あるプレーを見せつけているのだ。

 今回のリビングストン戦は、相手が5バックを形成。中央を固めて守備的に戦ってきたため、サイドのスペースが空いて、チャンスを作りやすかった。特に前田・旗手・左SBグレッグ・テイラーのトライアングルは連動性が高く、良いコンビネーションで敵を攻略して、中央の古橋にラストパスを供給する形を繰り返し作っていた。

 29分のテイラーの先制点、34分の前田の追加点も左の崩しから生まれたもの。それだけ迫力十分だったと言っていいだろう。

 そこでひと際、目を引いたのが、前田のオン・ザ・ボールの動きだ。彼は自慢のスピードを活かしてドリブルで1対1を仕掛け、対面の右ウイングバックを突破。マイナスのクロスを入れるシーンを次々と作ったのだ。
 
 Jリーグにいた1年前までは裏への抜け出しやラストパスへの反応など、オフ・ザ・ボールの動きで勝負するタイプの選手だったが、今は三笘薫(ブライトン)のように局面の打開力をグイグイと全面に押し出している。

 カタールW杯で世界基準を体感した男にしてみれば、「スコットランドの格下相手なら個の力で十分に打開できる」という自信を抱くのも当然のことかもしれない。ハードワークやスプリントといった能力ばかりに目が行きがちだが、今の前田は足もとの技術レベルが上がり、多彩なプレーができる選手になりつつある。それは1つの朗報と見てよさそうだ。

 そんな背番号38の動きを巧みにフォローするのが旗手。前田が中に絞ったら外に開いてチャンスメイクを試み、前田が外から崩してくる時は中に入って虎視眈々とゴールを狙う。さらにテイラーが上がった時には左SBのポジションを埋めるなど、とにかく戦術眼とポジショニングの良さが光ったのだ。

 この日の先制点アシストに象徴される通り、旗手のダイナミックさと臨機応変さがセルティックの中盤を円滑に動かしていると言っても過言ではない。この強度で複数ポジションをこなせるのだから、アンジェ・ポステコグルー監督にとっても本当に有難い存在のはず。ここからさらに目に見える結果に絡み続けてもらいたい。
 

次ページ日本人選手の価値を高めてくれれば――

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