【連載】小宮良之の『日本サッカー兵法書』 其の四十四「Jリーグが隆盛を迎えるには?」

2015年11月12日 小宮良之

ひとつのヒントは、ゲームのテンポだ。

G大阪はACLでベスト4と健闘したが、浦和や鹿島はグループリーグ敗退。アジアの盟主としての風格は失ったままか。(C)Getty Images

 2015年シーズンのJリーグが幕を閉じつつある。
 
 リーグ全体のレベルは向上しているのか? 現状を再検証するのに悪くない時期だろう。
 
 アジア・チャンピオンズリーグでは柏がベスト8に進み、G大阪がベスト4と健闘した。どちらも広州恒大に敗れる形だったが、マネーパワーで強化を進める中国勢や執念を燃やす韓国勢と開きつつあった差は、いくらか埋まったように映った。もっとも、浦和、鹿島はグループリーグで敗れ去っており、(クラブレベルで)アジアの盟主としての風格は失ったままか。
 
 Jリーグから世界に飛躍する選手も、そのクオリティを測る標準になるだろう。今季は出戻り選手のほうが多く、その点は不安を残した。夏の移籍に至っては、FC東京からマインツに移籍した武藤嘉紀だけ。日本人Jリーガーのレベルアップを考えると、この停滞は気になる。とは言え、ブラジル・ワールドカップでの日本代表の惨敗が尾を引いて市場価値が下がっただけとも言える。
 
 では、どうすればJリーグは隆盛を迎えられるのか?
 明確な答えはない。おそらくは、ディテールを突き詰めるしかないのだろう。
 
 ヒントのひとつとして、ゲームのテンポはある。
 Jリーグは昨今、アクチャルプレーイングタイムを増やす努力をしている。プレーがアウトになったり、ファウルで試合が止まった時、できるだけ早い再開を促すようになった。
 
 具体的にはFK、CK、ゴールキック、スローインなどの迅速化である。また、アドバンテージをとってプレーを流し、実際のプレータイムを増やし、怪我して倒れた選手もできるだけ早く起き上がるか、担架でピッチ外に出す。
 
 具体的にこれに着手しているのは、試合を裁く審判である。
 これによってプレー時間は増えたが、まだまだ足りない。ここぞという場面の敵陣でのFKならいざしらず、もっとスピードアップを促すべきだろう。ゴールキックでプレーアウトから30秒以上かかるなど遅すぎる。スローインもプレーの裂け目になっており、冗長さを感じる。CKにしても、蹴るまでの時間がゆったりとしすぎており、白けさせかねない。

次ページ欧州のトップリーグとの差は約10分間。アクチュアルプレーイングタイムの時間差は是正する必要がある。

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