連載|熊崎敬【蹴球日本を考える】G大阪は何をしたかったのか

2015年11月01日 熊崎敬

鹿島は執拗な右サイド攻撃によってリズムをつかんだ。

右サイドからの攻撃で狙い通りG大阪を攻略した鹿島。3年ぶり6度目のナビスコカップ制覇を果たす。 (C) SOCCER DIGEST

 鹿島がG大阪を退けたナビスコカップ決勝、両者の間には3-0というスコア以上の差があった。
 
 鹿島は終始、主導権を握り、敵陣でゲームを進めた。
 シュート24対5、コーナーキック12対2という数字も、そのことを雄弁に物語る。
 
 鹿島は復調した第2ステージから見せている、執拗な右サイド攻撃によってリズムをつかんだ。
 遠藤が左利きを生かして中央にカットイン、そこに大外を攻め上がる西やボランチの柴崎、さらには2トップの金崎、赤﨑などが次々と絡み、短いパスをつなぎながらサイドを深くえぐっていく。
 
 かつての鹿島は堅守速攻、少ないチャンスを確実にゴールに結びつけることで勝利を積み重ねていたが、いまは違う。ボールを支配し、パスをつなぎながら、多くのチャンスを創り出すことを狙いとしている。
 
 これは日本人選手が中心となり、傑出した得点力を持つストライカーがいないというチーム事情もあるのだろう。実際に彼らは立ち上がりから猛攻を仕掛けたが、数々のチャンスを逃し、前半をスコアレスで折り返してしまう。
 
 だが後半、鹿島はふたつのCKをゴールに結びつけた。サイドアタックが機能すると、必然的にCKが増えていく。それを上手くモノにしたということだ。
 
 2-0と勝利を引き寄せたあとも、彼らは何度もCKを獲得した。CKは便利なもので、勝っているチームはゆっくりと蹴りに行ったり、コーナー付近でキープをすることで時間を稼ぐことができる。試合巧者の鹿島は、そのあたりも狙いながらサイドアタックを仕掛けているのだ。
 
 鹿島の試合運びを観ていると、このチームが何をやろうとしているか、選手や監督に訊かなくても手に取るようにわかる。
 
 まず彼らはジーコ時代からの伝統でもある、敵の嫌がることをやろうとする。
 その主たる手段が人数をかけたサイドからの切り崩しで、ペナルティエリア内、それも相手ゴールのニアポスト近くを取ろうとする。それができればゴールの確率が極めて高くなり、仮にできなくてもCKを数多く取ることができる。敵の利になることはひとつもない。

次ページ頼みの宇佐美も守備に奔走する中で消えていった。

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