【サッカーダイジェストの視点】イラン戦後半の攻勢は当然の流れ。むしろ機能不全な前半の出来に悩みは深まった

2015年10月14日 五十嵐創(サッカーダイジェストWEB)

「フィジカルの強い相手にどう攻撃を組み立てていくのか…」(香川)

前半はほとんど効果的な縦パスが香川ら前線の選手に入らなかった。前からプレスに来た相手にどう戦うのかは大きな課題だ。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

 試合開始1時間前になっても、観客がまばらにしか入っていないアザディ・スタジアムは、完全アウェーという雰囲気からはほど遠かった。10万人収容の広大なスタンドは空席がほとんどで、メインスタンドとバックスタンドの一角がようやく埋まる程度。ひと塊のファンたちの声援は迫力があったが、例えば埼玉スタジアムに来たシンガポールやカンボジアのほうが、よほどアウェーの威圧感を感じていただろう。
 
 それでも、日本の選手たちは、立ち上がりから前がかりにプレッシャーをかけてきたイランの勢いに呑みこまれた。最終ラインからのビルドアップは、ほぼ機能せず。トップ下の香川やCFの武藤がボールを受けるシーンは極端に限られ、右ウイングの本田もDFに激しく身体を寄せられてボールロストを繰り返す。
 
 左ウイングの宇佐美に至っては、いるのかいないのか分からないほど存在感が希薄で、迫力ある攻撃を仕掛けられなかった。まるで、5日前のシリア戦の前半をなぞるような出来に、失望感しか抱けなかった。
 
 もちろん、「50パーセントを変える」と宣言したハリルホジッチ監督が、左SBに米倉、ボランチに柴崎、CFに武藤とバックアップの選手をスタメン起用したため、コンビネーション面で「リスク」(同監督)があったのは確かだが、前線では本田や香川、ボランチより下では長谷部と吉田と、軸となる選手を残してもいたのだ。
 
 残念ながら「フィジカルの強い相手に対して、どうやって攻撃を組み立てていくのかはすごく課題が残った」と香川が振り返ったように、現在の日本代表の実力では、アジアレベルでさえ苦戦を強いられると認めざるを得ないだろう。

次ページ綺麗な崩しの形にこだわりすぎて一本調子な攻撃に。

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事