現役引退後にフロント入り。STVVの立石敬之CEOが回想する大分時代の“波瀾万丈”「壮絶だった。もう一回やれと言われたら…」

2022年09月04日 中田徹

「ヨーロッパに行かないと日本代表になれないみたいな風潮になってしまう」

大分時代について語ってくれたSTVVの立石CEO。写真:中田徹

 シント=トロイデン(STVV)と大分トリニータが、両クラブの発展と人材育成を主目的とした業務提携を結んだことを発表したのは2018年2月。その縁で、大分トリニータ・アカデミー部門の選手やスタッフは18年、19年とSTVVで短期留学を実施。コロナの影響で一時中断されたが、今年の8月、久しぶりに留学が復活した。

 シント=トロイデン(STVV)の立石敬之CEOは「『以前、STVVに留学した選手たち(屋敷優成、弓場将輝)がプロになりました』という連絡をもらって、嬉しかったですよね。大分トリニータは、DMM.comがSTVVを買収したときからの提携クラブ。コロナ禍以降、初めてSTVVに来てくれました」と顔がほころぶ。

「この間、(大分の選手・関係者たちと)食事をしたんだけれど、料理や言葉がわからないなりに自分で注文したりすることが大事だと思うんです。そういうたくましさも含めて、日本に帰ってからが重要。ベルギーで急にうまくなることはない。ここでの刺激を受けて、日本に戻ってから、選手たちの日常のルーティンが変わっていかないといけない。そういう話を彼らにしました」

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「日常のルーティン」とは何だろうか?

「ベルギーではインテンシティが高いことが日常になっている。ベルギーから日本に戻った直後、コーチは『あそこのパススピードをもっと上げないと、ベルギーでは通らなかったでしょ。もっと速く、もっと速く』と選手たちに刺激を与える。それが1か月、2か月と経つうちに薄れていってしまうわけですよ。そういう刺激が日本にないと、ヨーロッパに行かないと日本代表になれないみたいな風潮になってしまう。Jリーグが世界最高のリーグを目ざすのであれば、その刺激を日本の日常の中で作らないといけない」

 インタビューの指定場所に赴くと、そこには前日、話を聞いたばかりの大分の小澤正風 COOの姿があった。

立石CEO「僕が大分の総括部長をしていた時、1年間だけ、コーチをしたんです。当時の僕は運営、総務、補強を兼ねていたから、『もういっぱいいっぱいで無理です』となって、旅行会社に勤めていた小澤くんを紹介してもらって『助けてほしい』と遠征マネージャーを頼みました」

小澤COO「前職柄、まったく苦にならないですからね。2000年に大分に入りました」

次ページ大雨の中でライン引き。「『こんなことをしていていいのか』と情けない自分がいた」

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