CL制覇を目ざすパリSG、新指揮官の希望で“切り札”を獲得。前監督が「何度も必要だと要求したが、取り合ってくれなかった」人物とは?

2022年08月17日 リカルド・セティオン

イブラヒモビッチは「パリSGは選手をつぶす機械だ」

昨季のCL敗退後にパリSGのファンからブーイングを浴びたメッシとネイマール(右)。(C)Getty Images

 パリSGにカタール資本が入った2011年。その初日にオーナーのナセル・アル・ケライフィはこう明言した。

「我々の目標はチャンピオンズ・リーグ(CL)で優勝することだ」

 しかし、それから11年たった今も、パリSGはそれを手に入れることができないでいる。その間チームはカタールのエミールの金を使って、ズラタン・イブラヒモビッチ(現ミラン)、エディソン・カバーニ(無所属)、ネイマール、リオネル・メッシと多くのスター選手買いあさり、多分サッカーチームとしてこの5年間で世界で一番カネを使ってきた。それでもCL優勝は果たせない。
 
 昨シーズン、決勝トーナメント1回戦でレアル・マドリーに敗れ、またタイトルが遠のいてから、チームはこれまでの清算を始めた。レオナルドSDを解任し、マウリシオ・ポチェティーノ監督を追い出し、選手の入れ替えもまだ終わっていない。また新聞ネタにはならないが、少なくとも10人のチームスタッフが解雇されている。
 
 11年間勝てないことの重みはプレッシャーとトラウマとなりチームにのしかかっている。マドリー戦で敗退した時、パリSGサポーターが自身のチームに向けたブーイングは、歴史に残るほどの酷さだった。きっと、その声はまだ選手のたちの中に響き続けているだろう。リオネル・メッシもネイマールもエムバペも人間だ。それが重荷とならないわけはない。
 
 リーグ・アンでは優勝したが、誰もそれを祝おうとしない。それよりもカップ戦のタイトルを怒っている。今のパリSGは勝って当たり前、負ければスキャンダルという状態だ。こうした環境は決して選手にとって良いものではない。

 パリSGを後にした者たちは、その雰囲気を口々にこう言っている。

 イブラヒモビッチ「パリSGは選手をつぶす機械だ」

 トマ・ムニエ(現ドルトムント)「このチームにいた時は練習だろうが試合だろうが、終始緊張状態が続いていた」

 トーマス・トゥヘル(現チェルシー監督)「あそこでは、負けるたびに失敗者の烙印を押された」

 もちろんマドリーでもマンチェスター・ユナイテッドでも、勝利は常に求められる。ただサッカーを知る彼らは、常に勝てないこともわかっている。しかし、パリにはそんな空気は1ミリもない。彼らは絶対に絶対に勝たなくてはいけない。それだけのカネを使っているのだから勝って当たり前ではないか、という論理だ。

 パリSGのトップはサッカー文化のないカタールという国から来ている。サッカーを知らない者だからこそ、常勝を求めてくる。サッカー理解している者なら、選手が幸せであることがいいプレーにつながることがわかるが、パリSGのトップにはそれがわからない。そして、ひどいことにそれにサポーターが拍車をかけている。
 

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