【孤高のサムライ戦記|田中亜土夢】ボランチで新境地を開拓。走力も健在の34歳は、日本とフィンランドの架け橋に

2022年08月06日 元川悦子

高い適応力でスムーズに現地に溶け込む

ヘルシンキではボランチでプレーする田中。10月で35歳を迎えるが、体力的な不安はなく、「1試合で10キロ以上は走ってます」。写真:本人提供

 日本を離れ、海外に活躍の場を求めて戦い抜く――己の信念を貫き、独自のキャリアを刻むサムライの生き様をディープに掘り下げる。フィンランドで奮闘を続ける田中亜土夢が描く未来像とは?

――◆――◆――

 8月に入り、欧州主要リーグが続々と開幕。熾烈な戦いも本格化しつつある。

 田中亜土夢が所属するフィンランドの強豪・HJKヘルシンキは4日、ヨーロッパリーグ(EL)予選3回戦でスロベニアのマリボルとの第1レグに挑み、2-0で先勝。田中自身も後半頭から45分間プレーし、白星に貢献した。

「今年のHJKはチャンピオンズ・リーグ(CL)の予備戦から出ているのですが、僕はここまで4戦は出番がなかった。今回のマリボル戦で欧州初出場が叶いました。

 今のチームでは絶対的主力というわけではなく、控えに回ることも多いんですが、最近リーグ3試合はまずまずの活躍ができていた。それを見た(トニ・コスケラ)監督が起用に踏み切ってくれたんだと思います。

 10月で35歳になりますけど、体力的な衰えは一切感じないですね。今はボランチで出ていて、1試合で10キロ以上は走ってますし、90分余裕でやれてますから」
 
 どこまでも前向きな田中がフィンランドに赴いたのは、2015年1月。故郷のクラブであるアルビレックス新潟で10年間プレーした男の北欧移籍は大きなサプライズだった。

 冬の寒さ、日照時間の少なさ、言葉や生活スタイルなど日本と環境の異なる国だけに、さまざまな困難に直面すると見られたが、適応力の高い田中はスムーズに現地に溶け込み、背番号10をつけて躍動。2015年シーズンは31試合に出場し8ゴールという目覚ましい成果を挙げた。

 2年目の2016年は17試合出場・5得点とやや物足りなさを感じさせたが、3年目の2017年は33試合出場・7得点。大きな爪痕を残すことに成功したのだ。

 この実績を引っ提げ、日本に戻り、セレッソ大阪で2シーズンプレー。だが、本人は「もう一度、フィンランドに戻りたい」と熱望し、コロナ禍に差し掛かりつつあった2020年1月にヘルシンキに復帰する。
 

次ページ希望になったのが、新たなポジションへの挑戦

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事