【岩本輝雄の視点】“3秒で勝点3を稼ぐ男”俊輔は、直接FKのようにクロスを蹴る

2015年09月21日 岩本輝雄

一瞬の隙が命取りになるスリリングなゲームだった。

ゲーム内容としては少し物足りなさを感じた横浜対FC東京戦。特にアウェーチームは手堅く、慎重な戦いぶりで、組織的な守備は機能。マリノスは間違いなく攻めあぐねていたのだけど……。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

 8月に入ってからは調子を上げてきている横浜と、年間順位で好位置をキープするFC東京との一戦は、以前から注目していたカード。強豪同士の対戦ということもあるけど、クロスやセットプレーに自信があったレフティの僕からすれば、「俊輔」対「太田」の"FK対決"も楽しみにして、9月19日に日産スタジアムに足を運んだ。

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 最終的には、期待していたようなふたりの直接FKは見られず、その点は残念だった。両チームとも、自陣のバイタルエリアでは不用意にファウルをしないようにしていたんだと思うけど、ゲーム内容としては、正直に言えば少し物足りなさを感じた。
 
 特に前半は見せ場が少なかった。お互いに様子を探り合っている感じで、ゴールを奪いに行くよりも「失点したくない」というような戦い方をしていた。
 
 30~35メートルのコンパクトな陣形を保ちながら、ボールの動きに合わせて各選手が左右にも上下にもしっかりとスライドして、簡単にスペースを与えないサッカーでにらみ合いが続く。
 
 そうした手堅さ、慎重さでは、FC東京のほうがその意識がより強かった気がする。闇雲にハイプレスを仕掛けず、後ろでしっかりとブロックを形成する。前田とバーンズの2トップは、マリノスの最終ラインがボールを動かしてもほとんど反応せず、ボランチに入れられた時に初めて奪いに行く。
 
 最前線がひとつラインを下げて守備をスタートさせるから、全体的に守備的になるのは当然で、それもマリノス対策だったとは思う。攻撃陣がわりと流動的に動いてくるマリノスに対して、釣り出されて中盤にスペースを開けないよう、FC東京は組織的な陣形を崩さない。相手をよく研究しているなという印象を受けた。
 
 だからFC東京からすれば、前半を0-0で折り返せたのは狙いどおりだったはず。
 
 後半も試合の構図に大きな変化はなし。FC東京は相変わらず堅い守備を見せ、局面でも激しく対応していたし、マリノスはやや攻めあぐねていた。
 
 ゴール前の攻防が少なかった点にフォーカスすれば退屈に思うかもしれない。ただ裏を返せば、一瞬の隙が命取りになるスリリングなゲームでもあった。
 
 だからこそ、88分の"あの場面"では強い違和感を覚えた。

次ページ時間にすればほんの2~3秒だけど、それだけあれば十分。

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