「タケは何か違うものを持っている」ソシエダ番記者に訊いた久保建英の“リアル評”。「一握りの選手のみが醸し出す空気感」で懐疑論者を黙らせる【現地発】

2022年07月30日 ミケル・レカルデ

相手の守備網を破る鋭いパスや悪魔のようなドリブルを繰り出す

ここまでプレシーズンマッチ2試合でプレーした久保。写真:なかしまだいすけ/アフロ

「全然ダメだ」「伸び悩んでいる」「既存の選手を上回ることはない」

 近年、移籍市場がオープンし、レアル・ソシエダがタケ・クボ(久保建英)の獲得に動くたびに、一部のうるさ型を自称する識者の間で繰り返されてきた反論だ。当然今夏、加入が決まった後も、鳴りを潜めることはなかった。

 しかし不思議なことにタケが後半の頭から出場したボルシアMG(ドイツ)戦に続き、スタメンを飾ったオサスナ戦でも活躍を見せると、懐疑論者たちは黙り込んでしまった。

 まず大前提としてタケは素晴らしいポテンシャルを持った選手だ。確かにレアル・マドリーで成功を収めるという夢を実現するには足りないものがあるかもしれない。しかし3年前、同じくマドリーから加入したマルティン・ウーデゴーがそうだったように、ソシエダの中心選手として君臨することは可能なはずだ。少なくともこの数日の間に、シンデレラの足にぴったり合う靴のように、ソシエダのプレースタイルにフィットしていることを示した。

【動画】久保建英が躍動したオサスナ戦のハイライト

 いま地元のファンの間では、今シーズン、イマノル・アルグアシル監督が採用するシステムを巡って活発な議論が交わされている。昨シーズン、冬の移籍市場でのラフィーニャの加入とミケル・オヤルサバルの負傷による戦線離脱を境に考案した中盤をダイヤモンド型に構成する4-4-2とトップチームの指揮を執るようになってから多用してきた4-3-3がその有力候補だ。

 今夏、タケに加え、モハメド=アリ・チョとブライス・メンデスが加入。2列目が質量ともに充実し、アルグアシル監督は新たなアプローチができるようになった。それはオサスナ戦でも明らかだった。4-4-2で守備を厚くし、攻撃は創造性豊かな選手たちに自由を与えることでその能力を発揮させた。

 この環境の中で、タケほど心地よく動ける選手はいない。開始当初はなかなかプレーに関与できなかったのは事実だが、一度エンジンがかかると、才気あふれるプレーを見せ、ファンを虜にした。ボールを受けて、ゴール方向にターンすれば、チャンスの匂いが漂った。

「タケは何か違うものを持っている」。その日、試合会場のスビエタ(ソシエダの練習場)に足を運んだ観客が抱いた共通の印象だった。明らかになったのは、タケがソシエダのプレースタイルにフィットしているだけではない。アルグアシル監督もまたタケが責任を持ってプレーできるように戦術の見直しを図っていることだ。クラブがタケに用意した役割、主役を担ってもらうため、である。

 アルグアシル監督の起用法からもそれは伺える。60分間プレーさせたのも、万全のコンディションでラ・リーガ開幕節のカディス戦に迎えられるようにするための一環だろう。ポジションも得意とする右サイドでプレー。そこから中央にドリブルで切れ込み、相手守備陣に脅威を与えていた。

 確かにオサスナはタフなチームだ。タケもファウルも辞さない相手のディフェンスに手を焼き、いら立ちを見せることもあった。しかしそんな中でも、センスの高さを伺わせるボールタッチから相手の守備網を破る鋭いパスや悪魔のようなドリブルを繰り出し、そのパフォーマンスはチームの中で一際輝いていた。

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