「ゴールを決めるだけのFWは不要」実はバイエルンはレバンドフスキを放出したがっていた。シャビも望まなかったバルサ移籍の舞台裏【現地発】

2022年07月29日 エル・パイス紙

指揮官の主張にカーンとサリハミジッチは言葉を失った

レバンドフスキのバルサ移籍はラポルタ会長(左)主導で決まった。(C) Getty Images

 バイエルン・ミュンヘンにとってロベルト・レバンドフスキの6000万ユーロ(約84億円)での売却は予想外の出来事だった。ヘルベルト・ハイナー会長、オリバー・カーンCEO、ハサン・サリハミジッチSD、ユリアン・ナーゲルスマン監督がこぞってビッグディールの成立を祝った。

クラブに近い情報筋によると、4月22日にビジャレアルに敗れてチャンピオンズ・リーグ(CL)準々決勝敗退が決定した後、レバンドフスキが23年6月に満了する契約延長オファーを受け入れない場合、シーズン終了後に自由契約にすることでコンセンサスが取れたという

 そんな矢先に、バルセロナから獲得の打診があった。正式オファーを提示したのはカタルーニャのクラブだけだった。移籍金を巡っては、バルサが5000万ユーロと吹聴しているのに対し、バイエルンの関係者は匿名を条件に、4500万ユーロ+出来高1500万ユーロの総額6000万ユーロと明言する。

 2月の時点でナーゲルスマン監督はチームの将来に強い危機感を抱いていた。フロントに対し、特定のポジションにおいてテコ入れの必要性があると提言した。その中で真っ先に名前が挙がったのがレバンドフスキだった。

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 もちろん実績は申し分ない。しかしナーゲルスマンは、34歳という加齢による衰えと戦術面でのアンマッチの2つの問題を指摘。クラブ関係者によると、ナーゲルスマンはこう力説したという。

「バイエルンはブンデスリーガで10連覇中だ。しかし、チャンピオンズ・リーグで競争力を発揮するためにはただゴールを決めるだけではなく、ファイナルサードにおいて集団戦術に幅広く貢献できる"9番"が必要だ」

 ナーゲルスマンが指摘するのは、レバンドフスキやルカ・ヨビッチのようなストライカーが躍動するブンデスリーガの土壌だ。その理由として、指揮官は第一に攻守が目まぐるしく入れ替わる試合展開、第二に、CBの人選において敏捷性やスピードよりも、空中戦の高さと対人の強さを重視する傾向を挙げる。

 確かにレバンドフスキもブンデスリーガでは際立った活躍を見せていたが、年々、守備戦術が高度化するCLでは、とりわけ同等の実力を持ったチームを相手にすると同じようにはいかない試合が増えていた。

 ナーゲルスマンはさらに踏み込んだ論調を展開した。曰く、得点機会が10回あれば、レバンドフスキは7回ゴールネットを揺らす。しかし仮にレバンドフスキが退団することになっても、彼抜きの攻撃を構築し、同じプレー時間で20回の得点機会を作り、3人のFWと2人のMFでフィニッシュ役を分け合うことは可能だと。この時、ナーゲルスマンの頭の中にあったFWは、サディオ・マネやロベルト・フィルミーノだった。

 ナーゲルスマンのこの提言に言葉を失ったカーンとサリハミジッチは、以後レバンドフスキのプレーを毎試合精査するようになった。ビジャレアルとの2試合を終えて2人が出した結論は、ナーゲルスマンは正しかったということだった。

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