欧州サッカー 若手ブレイク候補10選 この逸材から目を離すな!――Part 1

2015年09月17日 ワールドサッカーダイジェスト編集部

アトレティコの「改革」の行方を左右するキーマン。

圧倒的な技術と視野の広さを誇るオリベルは、優れた展開力でゲームを操る司令塔だ。 (C) Getty Images

オリベル・トーレス(アトレティコ・マドリー/スペインU-21代表) 1994年11月10日生まれ
 
 オリベル・トーレスは、「バルサっぽさ」を感じさせる選手である。ボールプレーにひと際優れ、周りを活かし、活かされる術を知り、中盤でゲームのリズムをコントロールできる。
 
 その特性はアトレティコ・マドリーの同僚コケに似ているが、想像力がより豊かであり、相手選手との間合いを計りながらタイミングをずらして高難度のパスを通す。
 
 自分で点を取ることに執着しない点も含めると、コケよりもかつてのイバン・デ・ラ・ペーニャ(天才パサーと謳われたバルサ・カンテラ出身のMF。すでに引退)のほうが近いかもしれない。
 
 そのオリベルが今シーズン、大型補強により意気上がるアトレティコで飛躍の予感を漂わせている。
 
 しかし、これまでずっと彼を使おうとせず、2シーズン連続で他のクラブにレンタル放出したシメオネ監督が、今回チームに残したのはなぜか?
 
 ポルトに武者修行のため出された昨シーズンのオリベルは、この隣国の名門で着実に成長・進化を遂げた。だがそれは単に、「守備ができるようになった」、「走るようになった」、「フィジカル的に向上した」などといった話ではない。
 
 では、なにが変化したのか?
 
 断言するが、オリベル自身がプレースタイルを大きく変えたわけではない。昨シーズンの彼はポルトでレギュラーを掴み、コンスタントにピッチに立てるようになったため、おのずと多くの実戦経験を積んだ。
 
 そのなかで状況判断力が磨かれ、持ち前の高度なスキルを適切なタイミングで繰り出せるようになっていったのだ。メンタル面の成長も顕著で、以前と比べて落ち着いてプレーできるようになった。
 
 繰り返すが、プレーの本質が変わったわけではない。変わったのは、むしろシメオネ監督の考え方だろう。
 
 走力を含めたインテンシティーに力点を置くプレー哲学は、就任3年目の13-14シーズンにリーガ優勝、チャンピオンズ・リーグ準優勝という形で大きな実りをもたらした。しかし、ボールを持っていないストレスが選手たちを徐々に蝕み、昨シーズンのアトレティコはチーム力が減退してしまった。
 
「シメオネのチームは走りすぎる」
 そう言い残し、バルサへ去って行ったアルダの言葉は重い。
 
 選手の気持ちを悟るのに敏なシメオネは、ポゼッションを重視した戦い方をプレシーズンから準備してきた。リアクション型のフットボールから、ポゼッション重視の戦い方へと完全に転換するかどうかはともかく、少なくとも選択肢のひとつとして考えているのは間違いない。
 
 そうしたチーム改革のなかで、オリベルのスキルが欠かせなかったのである。
 
 若きオリベルがチームのスタイルそのものを変革させたとき――。20歳のMFは、新時代のフットボールの先駆者となるであろう。
 
文:ヘスス・スアレス
翻訳:小宮良之

次ページ遠目の位置から仕掛けてフィニッシュに持ち込むのが十八番。

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