【稲本潤一×今野泰幸対談】南葛SCが示す地域密着。元日本代表ふたりの胸を打ったチームの姿とは?

2022年07月04日 伊藤 亮

「南葛SCには応援したくなる選手が多いんです」(今野)

『キャプテン翼』から生まれた南葛SCというクラブを稲本(左)と今野(右)はどのように見ているのだろうか。写真:徳原隆元

 稲本潤一と今野泰幸。そして関口訓充に伊野波雅彦。こういった元日本代表のビッグネームがなぜやって来たのか。それは「南葛SC」という特別な意味を持つチーム名に惹かれたことが大きい。

 では、実際に南葛SCに入ってみて、そしてホームの葛飾区やサポーターたちの印象はどういうものなのだろうか。

 前回に続く対談第2回は、より今の自分たちに近いところに焦点を向けて語り合ってもらった。

――◆――◆――

 J1から数えればJ5に位置する南葛SC。関東サッカーリーグ1部というアマチュアリーグに属しながら、その知名度、存在感は群を抜いている。この特殊なチームに実際に加わり、具体的に見えてきた"色"などはあるのだろうか。

稲本 南葛SCといったら、なんといっても『キャプテン翼』のチーム。『ボールはトモダチ』を合言葉にしたボールを大事にするサッカー。そのイメージがまずあって、その次に自分たちのスタイルを加えているイメージ。選手以前に"南葛"の名前が圧倒的に大きい。だからこそ、その名前に追いついていかないといけない。名前先行で、そこにサッカーの質が伴っているかとなると、まだまだ足りてない。メディアの取り上げられ方にしても、名前が先に突っ走っていってしまっている。結果もついてきていないし、早く追いつかないと。

今野 ただ、チームにはキャラクターが揃ってますよ。特徴があるというか、おもしろい人物がたくさんいます。みんなでワイワイと楽しくやってます。明るい選手も多い。関口(訓充)とか。

稲本 今シーズンから俺らと同タイミングで入った人を挙げても(笑)。昨シーズン以前からいる選手を挙げないと。

今野 チョイスが間違ってました(笑)? であれば村越(健太)とか最高です。あの特徴であるドリブル突破は見ててファンになります。あんなにドリブルを仕掛ける選手、います? Jリーグの中でも一番だと思いますよ。

稲本 いやいや、まだJリーグに入ってないから(笑)。あと2つ上がらないと。

今野 あ、そうか(笑)。でも気持ちいいですよね、応援したくなります。普段から明るい好青年ですし。そう、南葛SCには応援したくなる選手が多いんです。って僕も南葛の選手なんですが(笑)。村越はボール持ったら、場の雰囲気が変わりますから。2人、3人と相手が来ても"(ドリブルで)行け!"って見てますよ、僕は。みんなには『早くパス出せよ』と言われてますけど。

稲本 たしかに、あそこまでドリブルで持ち上がっていってくれるのはチームとしてもありがたい。でも基本、全部ドリブルで行くよね。明らかにケアされてるし、読まれてるし、試合中に相手選手の全員に『縦、行くぞ!!』って言われてるから(笑)。それでも2人くらい抜く。3人抜いたところは見たことがないけど。ムラに3人寄るってことは他にフリーの選手が2人いるってこと。チームとしてはそっちに渡った方が確実にチャンスになるから、コンちゃんほど"行け!"とは思わないかな。…って、なんでこんなにムラの話してんのよ。

今野 いやいやみなさん、村越には注目ですよ(笑)。

稲本 一方で、チームがおとなしいとは思わないけど、淡々としているというか。ゲーム中のコーチングに関して、リーダーシップをとって話す選手は少ないイメージがあって。そのなかで、今は自分やクニが声を出してる。自分に関して言えば年齢も年齢なので。人を動かさないとやっていけない。コーチングで伝えていくことであったり、バランスを作ることであったりを行うのは、自身が生き残るためにすごく必要なことで。それは30代後半あたりからすごく考えていて、すごく意識してる。コンちゃんはそんなに声出さないよね?

今野 そんなに出すタイプじゃないです。僕は基本、必要最低限でいいと思っていますから(笑)。思ったことがあったらプレー後に言う感じで。
 

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