筑波大時代の恩師が語る三笘薫“成長の軌跡”。ブラジル戦後に見せた晴れやかな表情の真意とは?「『なりたい姿』が見つかったと思う」

2022年06月10日 安藤隆人

「やりきれないという現実をあそこまで感じたのは久しぶり」

筑波大蹴球部の小井土監督。三笘の大学時代の印象を語ってくれた。写真:安藤隆人

 アジア最終予選の第9節・オーストラリア戦、カタール・ワールドカップ出場を決めた圧巻の2ゴールは、日本中に大きなインパクトを与えた。

 川崎フロンターレでの躍進の記憶をさらに強烈に上書きする活躍で、一躍注目のアタッカーとなった三笘薫。6月6日に行なわれたキリンチャレンジカップ2022のブラジル戦でも積極果敢な仕掛けで観客を沸かせたが、レアル・マドリーでチャンピオンズ・リーグ(CL)優勝を経験したばかりの世界屈指のDFエデル・ミリトンの前に、歴然とした差を痛感することになった。

「ミリトンもスピードがあるので、どこまで自分のスピードが通用するか挑んだのですが、2回やって2回とも奪われたので、そこが今の自分の立ち位置だと思います。(ミリトンは)僕自身の1本目の仕掛けを見て、2本目以降の立ち位置や身体の向きを決めたと思う。そこで素早い対応力を学んだので、僕もさらに上に行く駆け引き、対応力をもっと磨かないといけないと思った」

 試合後の会見で三笘はこう反省を口にしたが、彼の心の内をテレビで見つめながら察している人物がいた。
 
「ブラジル戦はすごく楽しそうに見えました。何回挑んでもやりたいプレーができない、やりきれないという現実をあそこまで感じたのは久しぶりだったと思います。テレビ画面に一瞬映った顔を見たら、ちょっと晴れやかなもののように感じました」

 こう語ったのは、筑波大蹴球部の小井土正亮監督。大学で三笘を4年間指導した恩師だ。

 ブラジル戦、三笘は72分に伊東純也に代わって投入され、そのまま左ウイングの位置に入った。ミリトンはCBでスタメン出場したが、三笘が投入される前に右サイドバックにポジションを変え、2人のマッチアップが実現した。

 三笘は81分、左サイドでボールを受けると、寄せてきたミリトンに対してワンタッチで大きく前にボールを出して加速したが、すぐにコースを切られた。鋭い切り返しからふたたび縦に仕掛けるも、身体を巧みに前に入れられてボールを奪われた。

 直後の82分には左サイドで、突破ではなくシンプルにクロスを入れる(クロスはDFに当ってCKへ)と、86分には左サイドからカットインして、対峙したMFブルーノ・ギマラエスを直角のフェイントでかわしてからワンツーでペナルティボックス内に侵入を試みる。ギマラエスに身体を当てられて突破は成功しなかったが、あわやPKかというシーンを作り出した。

 さらに88分、左サイドでふたたびミリトンと1対1に。一瞬のスピードで斜め前に仕掛けるが、これも動きを読まれて身体を先に入れられ、突破には至らなかった。
 

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