パリSGの術中にはまったマドリーをいかにして軌道修正したのか。大逆転勝利を導いたアンチェロッティの名采配【現地発】

2022年03月20日 エル・パイス紙

前半、戦略面で上回ったのはパリだった

パリSG戦でマドリーを大逆転勝利に導いたアンチェロッティ監督。(C)Getty Images

 レアル・マドリーが鮮やかな逆転劇を演じたパリSGとのチャンピオンズリーグ・ラウンド16セカンドトレグ。このようなエモーショナル面において極限状態に置かれる大一番では、時計の針が進むにつれて心理的なスパイスが他の味を蝕んでいくと思われがちだが、今回の好勝負を演出したのがカルロ・アンチェロッティ、マウリシオ・ポチェティーノ両監督の采配だった。

 最終的にその熾烈な戦術合戦は前者に軍配が上がり、イタリア人指揮官の采配は、マドリーの勝利に直接的な影響を及ぼした。

 前半、戦略面で上回ったのはパリだった。アンチェロッティは忠実にいつもの4-3-3を採用。カゼミーロとフェルラン・メンディの欠場という緊急事態にも、トニ・クロースをアンカー、ナチョを左サイドバックにそれぞれ配置するという無難な選択をした。加えてナチョには、相手の右サイドバック、アシュラフ・ハキミの攻め上がりを警戒し、中盤のラインを越えることを禁じていた。
 
 対するポチェティーノはより大胆に動いた。ポイントとなったのが、リオネル・メッシとネイマールのインテリオールのような振る舞いで、頻繁に中央のゾーンに顔を出し、クロースの両脇のスペースを有効に活用。さらにキリアン・エムバペを中央ではなく、左サイドに配した。相手のキーマン、ヴィニシウス・ジュニオールに対しては、ダニーロ・ペレイラが徹底的にその動きをケアし、右サイドの攻撃はもっぱら前述のハキミが担った。

 結果的にダニーロが中盤の一角として振る舞うことができなくなったが、そのマイナス分をメッシとネイマールがカバー。クロース、フェデリコ・バルベルデ、ルカ・モドリッチという相手の3枚に対し、後方のマルコ・ヴェッラッティとレアンドロ・パレデスも含めた4選手が中盤で数的優位を作り出した。

 そんなポチェティーノがこの一戦のために特別に用意した選手の配置が最高の形で結実したのが、38分のエムバペの先制ゴールだ。自陣でボールを受けたネイマールがワンタッチで広大に広がった前方のスペースへ絶妙なパスを供給。エムバペは自慢の快足を飛ばし、ペナルティエリア内に侵入するとニアサイドを豪快にぶち抜いた。

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