【消えた逸材】バルサ移籍でキャリア暗転…不運や怪我に泣いた「ロマーリオ2世」の顛末

2022年03月31日 沢田啓明

19歳でブラジル全国リーグの得点王に

09年7月にバルサ移籍を果たしたケイリソンだったが、これをキカッケに一気に……。(C)REUTERS/AFLO

 2008年、当時19歳だったケイリソンの出現は衝撃的だった。
 
 スペースへ抜け出してボールを受けるのが上手く、スピードに乗ってそのままゴールを陥れる。相手DFに囲まれても、トリッキーなボール扱いで手玉に取る。右足で強烈かつ柔らかいシュートを放ち、左足や頭からも点が取れる。オールラウンドなストライカーとして将来を嘱望され、名前の頭文字と背番号から「K9」の愛称が付いた。
 
 1988年、ブラジル中西部の地方都市ドウラドスで生まれる。元プロ選手だった父親がコーチを務めるクラブ「セネ」でボールを蹴りはじめ、ジュニア大会でゴールを量産。14歳でパラナ州の名門コリチーバに引き抜かれた。
 
 07年に17歳にしてトップチームに昇格し、ブラジル全国リーグ2部でいきなり12ゴール。翌08年には全国リーグ1部で21ゴールを挙げて、得点王に輝いた。
 
 09年には国内屈指の名門パルメイラスに移籍し、ここでも公式戦36試合で24得点と爆発。レジェンドのロマーリオとも比較されるブラジル国内屈指のストライカーに伸し上がった。
 
 この活躍を受けて、欧州中のビッグクラブからオファーが殺到。09年7月、移籍金1400万ユーロでバルセロナと5年契約を結んだ。20歳にして当時の世界最強クラブだったバルサへ――。まさに順風満帆のキャリアに見えた。
 
 しかし、ここから一気に舞台が暗転する。この獲得話は完全にフロント主導で、ケイリソンはジョゼップ・グアルディオラ監督が望んだ戦力ではなかったのだ。CFに同期入団のズラタン・イブラヒモビッチをはじめ、ティエリ・アンリ、ボージャン・クルキッチなどを擁していたチームに居場所はなく、ヨーロッパに渡ってすぐにベンフィカへと貸し出された。
 
 ところが、そのベンフィカにもハビエル・サビオラ、オスカル・カルドーソ、ヌーノ・ゴメスなどが所属しており攻撃陣は飽和状態。ケイリソンは国内リーグで前半戦の5試合(先発は1試合)に出場しノーゴールと苦しむ。
 
 10年1月には、1年半のローン契約でフィオレンティーナへと渡った。セリエAでも10試合で2得点と振るわず、同年夏にはレンタル契約が早期打ち切りに。帰国してサントスへと移った。
 

次ページ一度もカンプ・ノウでプレーできないまま…

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