サッカー中継にもたらした革命。なぜ高校サッカー選手権は日テレ系列外でも放送されるのか【選手権100年】

2021年12月31日 平野貴也

“選手権を創った男”、坂田信久インタビュー<第3回>

数多のニューヒーローを生んできた選手権。写真右は四中工時代の小倉隆史だ。(C)SOCCER DIGEST

「この放送は、民間放送43社の共同制作でお送りしています」

 第100回を迎えた全国高校サッカー選手権のテレビ中継を見ていると、こんなアナウンスが流れてくる。43社の中には、フジテレビ系列の沖縄テレビ放送、TBS系列の宮崎放送といった日本テレビの系列ではない局も含まれている。これは、まだテレビ中継がなく、注目もされていなかった高校選手権を一大イベントに引き上げた当時の歴史が大きく関与している。

 第45回大会が行なわれた1966年度、インターハイでの競技採用を機に、大阪毎日新聞社が主催を終了。日本蹴球協会(現JFA/日本サッカー協会)が大会を引き継ぐなかで、ある動きが起きていた。

 1969年に読売サッカークラブ(東京ヴェルディの前身)を立ち上げた読売グループの日本テレビが、70年夏に独自の「高校サッカー研修大会」を開催。日本テレビの系列局が各地元チームに密着して報道するスタイルの魅力を示して、1970年度の第49回大会からの独占中継契約にこぎ着けた。

 日本テレビのディレクター(当時)で独占中継の契約を目ざしていた坂田信久さんは、インターハイと時期が近い研修大会で強豪校を集めるのに苦労したが、前年度に史上初の3冠(インターハイ、国民体育大会、高校選手権)を達成した浦和南高校(埼玉県)に日参。松本暁司監督の協力を得て大会を成功させた。
 
 一方、同時期に大手広告代理店の電通から接触を受けていた全国高校体育連盟(高体連)サッカー部は、日本テレビ系列で網羅されない地方で放送がないことに難色を示した。そこで日本蹴球協会、日本テレビ、電通が協議。電通は、日本テレビ系列外のローカル局や県域UHF局(地上波独立テレビ局)に掛け合って放送網を拡大して課題を解決する。そして、年越し番組の「ゆく年くる年」以来となる他系列共同制作が実現した。

 翌年の第50回大会は、全国の民間放送38局で中継事業をスタート。日本テレビ系列のローカル局増設等により、いくつか放送局が変更、増加したが、当初から日本テレビは幹事としての立場を貫き、全国の各局が都道府県大会から全国大会まで、日本テレビと同じ立場でこの放送事業に取り組み続けている。他局との共同制作であるのには、こうした歴史的背景があったのだ。

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