【ルヴァン杯MVP戦記】控えめに言って超人的。大げさでなく化け物。明晰なハードワーカー・稲垣祥の凄み

2021年11月09日 今井雄一朗

稲垣本人が明かすゴール量産の要因

ルヴァン杯の全5試合すべてにフル出場し、計4ゴールをマークした稲垣。攻守の両局面で絶大な存在感を見せた鉄人ボランチが大会MVPに輝いた。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

 名古屋グランパスは総力戦のチームである。誰か一人の手柄を称えることをよしとせず、すべては準備と遂行の結果で"勝つべくして勝つ"のがマッシモ名古屋の流儀でありコンセプトだ。

 だが、それを理解したうえで2021年のルヴァンカップは稲垣祥の大会だったと言いたい。アジア・チャンピオンズリーグ(ACL)出場のため、予選は免除で優勝までの道のりはわずかに5試合のみの短期決戦だったが、それにしたって名古屋の背番号15が残した数字と足跡は、大会MVPにふさわしい価値に満ちていた。

 稲垣は名古屋の象徴である。運動量とハードワーク、そしてインテンシティと判断力が戦い方の根幹に据えられているチームにおいて、そのどれもがハイレベルに安定しているボランチは、その調子を見れば名古屋の状態がわかるだけの影響力がある。

 例えばACLのグループステージ終了後、帰国してなお隔離生活が続いたのちのリーグ戦で名古屋は連敗を喫するのだが、ここにおいての稲垣にはさすがに疲労の色が見えた。本人は否定したが、観ている側からすれば「あの稲垣でも疲れている。つまりチームは相当に疲れている」と敗因の一つに納得することもできたほど。

 だがその苦しい時期を乗り越え、名古屋も稲垣も復調していく最中でリーグのアウェー札幌戦(26節)で稲垣は2ゴールの大活躍を見せた。ここにおいて我々も名古屋の復活を確信し、その勢いは次週のルヴァンカップ初戦、鹿島との準々決勝へと歩を進めていく。
 
 迎えたホームでの第1戦、名古屋は前半の早い段階でセットプレーから先制し、順調な滑り出しと安定した試合運びを披露した。その中心にいた一人が稲垣で、相互補完性に優れる米本拓司と強固な中盤を形成。後半開始早々にはもはや名古屋の鉄板パターンと言える敵陣の深い位置からの折り返しを自ら捻じ込み、2-0の完勝に貢献している。

 稲垣の得点力は今季急に高まったわけではないが、その頻度と決定率の高さは目を見張るものがあるのもまた事実。敵地に乗り込んでの第2戦でも相手の圧力に何とか耐えた22分、やはり深い位置からの折り返しをダイレクトで決めきり、準決勝進出の決め手となっている。

 稲垣曰く、「経験から学びながら精度が上がってきたところと、カウンターはグランパスの一つの武器で、そこに自分の走力が生きるということ。いるべきポジションにいられる」のが、ゴール量産の要因だという。

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【ルヴァン杯決勝PHOTO】勝利をグッと引き寄せるチーム2点目を決めた、"MVP"稲垣祥を特集!

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